娘が小学校を卒業したのだが、卒業アルバムを見て驚いた。薄い。薄すぎる。
先生、1組、2組、3組の見開きで全8ページ。個人の顔写真だけで、全校生徒の集合写真もない。クラス写真も、委員会も、クラブごとの写真もなし。表紙も厚紙を貼っただけという代物だ。4才離れた上の兄のときは立派な数十ページのアルバムだったから、この1、2年のうちの変化なのだろう。
しかも、個人名の記載が手書きときている。一人ひとりに手書きさせたボードを胸の辺りで持たせ、顔と一緒に撮影している。名前の入力の手間や誤植を考えると合理的なやり方ではあるが、安っぽい印象は否めない。卒業アルバムの厳かな感じというか、質実ともに〝重み〟がない。
「何でこんなことになるんだ?」
と問えば、やれ、ウチの子の写真がない、だの、あの子ばかり写っている、だのと親がうるさいから、行事などでのスナップ写真の掲載はやめたのだという。
「社会とはそういう理不尽なものだと教えるのが学校だろう!」
とアルバムを手に力説していたら、握っていた隅のほうが折れ曲がってしまった。いや、本当にそのぐらいの薄さなのだ。
しかし、ことはこれで終わらなかった。続けて見せられた卒業文集は、なんとつづり紐で結んだ〝個人用〟。同級生たちの一言コメントこそあるものの、自分の作文すらなく、色鉛筆での自画像などが綴られている。作文がないなら、もはや「文集」ではないだろう。
「何でこんなことになるんだ!?」
と本日二度目の問いを発すると、「作文を添削するのが、先生たちの負担なんだって。一生残るものだから何度も見なきゃいけなくて、時間が取られるらしいよ」と妻。保護者会の際に、校長から説明があったそうだ。
これはどう考えれば良いのだろう? 先生が忙しすぎるということか、あるいは親が神経質すぎるということか。
結局、触らぬ神に祟りなしで、事なかれ主義に走っているように見える。協調を避ければ個人にフォーカスするしかないわけで、日頃は「みんなで」やら「力を合わせて」だのと集団教育を謳っているのに、その証となる運動会や文化祭、林間学校、修学旅行などの写真がなくて良いのだろうか? 文集だって、最低限、共有物として同じものを配布すべきだ。
先生に余裕がないというのなら、いっそ民間委託してはどうだろう? 最近では部活動の指導だって民間委託の動きがあるわけだし。何ならお手伝いしますぜ。
――とは言ってみたものの、小心な私には、保護者の皆さんの多様なご要望を受け止める自信はない。現在はデジタル技術を懸念した子どもの肖像権の問題などもあり、いろいろとややこしい時代なのだろう。
地域紙「タウン通信」発行人。著書に
『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、
『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、
『起業家という生き方』(同、共著)、
『スポーツで働く』(同、共著)、
『市役所で働く人たち』(同)。商業誌などでも執筆。
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谷 隆一