【話題の現場】新紙幣肖像の津田梅子

2024年7月3日

津田塾大学はなぜ小平に!?

今号発行日である7月3日㈬は、現行の紙幣(日本銀行券)の改刷日。テレビやネットニュースもこの話題で持ち切りのことだろう。

周知の通り、五千円券の肖像は小平市にある津田塾大学創立者の津田梅子だ。となると地域紙として気になるのは、梅子と小平市との関係。実は本紙は5年前にも特集を組んだのだが、今回改めて、この地域における梅子の関わりを取り上げたい。

新5000円札の肖像になった津田梅子

6歳でアメリカへ

女子の高等教育に生涯を捧げた津田梅子は、日本最初の女子留学生の一人としても知られる。

明治4年の岩倉使節団に同行して渡米したとき、梅子はなんと6歳。17歳までワシントン郊外で暮らし、帰国時には日本語を忘れていたという。

帰国後、アメリカとは異なる日本の状況に直面し、「女性の地位を向上させなければ」と使命感を覚え、再度の留学を経るなどして、明治33年、同大学の前身となる女子英学塾を創設した。

開校の場所は麹町区一番町。ほどなく移転した五番町で関東大震災による校舎全焼の苦難に遭ったが、再建して約7年を送り、より広い場所を求めて昭和7年に現在地の小平キャンパスへの移転を完了した。

18年に「津田塾専門学校」と改称し、戦後の23年、現在の津田塾大学となった。

「先に門を造ってほしい…」

さて、肝心の梅子と小平の関係だが、実はこれという強い結びつきはない。広いキャンパスを求めたとき、候補として他に、石神井、保谷、清瀬が挙がっていたという。

小平を選んだのは、武蔵野特有の雑木林や玉川上水、さらに秩父連山を望めるなど、自然豊かな風景が決め手となったようだ。

現キャンパスの当時の最寄り駅は徒歩約40分かかる国分寺駅。着工の頃、梅子は体調が優れず、「校舎は見られないかもしれないから、先に門を造ってくれないか」と口にしたとも伝わっている。小平を訪ねたのは2度にとどまった。

梅子は、校舎が完成する2年前の昭和4年に鎌倉で没している。しかし、遺書に「小平に埋葬してほしい」と書かれていたとのことで、校舎完成に併せてキャンパス内に墓が造られた。

大学に込める梅子の思いが伝わってくるようだ。

キャンパス内にある津田梅子の墓

地名の由来に

約9万平方メートルの広大なキャンパスは、開設後、次第に地域の交流拠点となっていった。

戦時中には、近隣の農村の女性たちを支援しようと、託児所が設けられた時期もあった。現在も公開講座やボランティア活動などで、市民との交流が図られている。

しかし、地域への影響という点では、何といっても地名があるだろう。

37年に小平が町から市へと移行する際、同学を中心に一帯は「津田町」の地名となった。それだけ同学が地域に浸透していたといえる。

立体の梅子に出会える

蛇足ながら、最後に新紙幣について触れておこう。

新紙幣では偽造防止技術としてお札への搭載は世界初となる3Dホログラムが施されている。これは肉眼でも肖像を立体で眺められるという最先端技術。これにより現代の私たちは、立体的な梅子に出会うことができる。

新紙幣が市場に出回るには少し時間が掛かるだろうが、早くお目にかかりたいものだ。

     ◇

なお、同学内には「津田梅子資料室展示室」(図書館2階)があり、一般公開されている。平日午前10時から午後4時まで。前日午前中までにメールか電話での入館予約が必要。詳しくは同室(☎042・342・5219)へ。

見学と市長懇談

同資料室や梅子の墓を見学後、「女性活躍や男女共同参画」をテーマに小平市長と語り合うという「市民と市長のタウンミーティング」が、29日㈪午前9時30分から11時30分まで開かれる。先着40人。申込締切は22日㈪。詳細は市民課(☎042・346・9508)へ。

津田梅子資料室

小平市・津田梅子特集

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