【シリーズ・防災を本気で考える】第3回 そのとき災害状況は…

2024年5月1日

防災計画の災害想定 多摩東部直下地震なら3市で死者231人…

各自治体が設けている防災計画を読んだことがあるだろうか? ページ数が多く、内容も広範で、とっつきにくい代物であるのは確かだ。中には「行政のためのマニュアルでしょ?」と認識している人もいるだろう。だが、真剣に向き合えば、「その時」への危機感が現実味を帯びて高まってくる。

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4つの地震、3つの想定

この地域――西東京市、東久留米市、小平市の防災計画は、東京都の計画に準じている。先に現状をいえば、都が昨年に計画を更新したため、各市ともまさに今、計画の見直しを急いでいるところだ。

ちなみに都の「令和5年版」では、▼住宅の耐震化などによって人的・物的被害の想定が減少、▼スマートフォンの世帯保有率やテレワーク実施率が高まるなどライフスタイルが変わっている、▼タワーマンションなどが急増している――といった環境の変化を受けて、実情に合わせた想定や対策への修正が行われている。

30年以内に70%

さて、最も気になる被害想定を見てみよう。

都の計画では、前提条件として、都心南部直下地震、多摩東部直下地震、大正関東地震、立川断層帯地震の4つの地震を想定している(これとは別に、南海トラフ地震の項目もある)。

このうち、多摩北部に大きな被害をもたらすと見られるのは多摩東部直下地震と立川断層帯地震で、マグニチュード7.3および7.4の規模が想定されている。概ね震度6強という揺れだ。

直視しなければならないのはその発生確率で、立川断層帯地震は今後30年以内に0.5~2%というものだが、多摩東部直下地震は、なんと今後30年以内で70%とされている。対策は待ったなしだ。

では、実際にそれが起こったら、どのような被害が出るのだろうか?

具体的な被害想定

都の想定では、地震発生の3つの時間帯を設定している。いずれも冬の発生で、早朝5時、正午、夕方6時の3つ。発生時刻により、帰宅困難者が増える(昼)、火災が増える(夕方)など被害状況に違いが出る。なお、それぞれ、風速4㍍時と8㍍時の2パターンを設けている。

ここでは一例として、多摩東部直下地震が冬の夕方6時(風速8㍍)に発生したときの被害想定を列挙しておこう=表。

まず死者は、西東京市=101人、東久留米市=46人、小平市=84人。揺れに伴う建物被害と、火災による死者が大半を占める。火災によるほうが多い(例えば西東京市では、揺れ=25人、火災69人)。

負傷者は、西東京市=1112人(重傷者192人)、東久留米市=620人(同94人)、小平市=1169人(同181人)。

自宅で過ごすことが難しい避難者は、西東京市=3万9935人、東久留米市=2万125人、小平市=2万9054人。

建物の被害としては、全壊では西東京市=704棟、東久留米市=486棟、小平市=962棟、半壊では西東京市=2433棟、東久留米市=1685棟、小平市=2955棟、さらに出火件数として西東京市=11件、東久留米市=7件、小平市=12件となっており、これにより焼失棟数が西東京市では3500棟を超えるなど、惨憺たる状況が想定されている。死者の原因を見ても、関東大震災の教訓からしても、火災には特に注意したい。

最後に、現代的な問題として、エレベーターの閉じ込めについて触れておこう。閉じ込めになり得るエレベータ停止台数として、西東京市=173台、東久留米市=21台、小平市=36台が想定されている。これを多いと見るか少ないと見るか。巨大地震発生後ではすぐに救出される期待は薄い。最近のエレベーターには自動復旧機能や自動着床装置があるので、日頃利用するエレベーターがあるならチェックしておきたいところだ。

次号では、こうした被害想定を踏まえて、市民が何をするべきかを取り上げる。

首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)

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