西東京市子ども条例テーマに
教わっていないことを「分からない」と言ったら、「そんなことも知らないのか!」と怒られた……って、「マジか!」。 そうやって参加者みんなで子どもの怒りを叫ぼうというユニークな「マジか!すごろく」が、先頃、西東京市で完成した。「西東京市子ども条例」をテーマにしたすごろくで、同市の若者たちが作製の中心を担った。このすごろくは、市内の6公民館で貸し出しもされている。
参加者の意見が割れることも 議論が楽しい
同すごろくは、A0判ほどの盤上でコマを進めながら、止まったマスの指示に従ってプレーヤーがそのつどアクションしていくもの。マスには、
①「好きな食べ物を教えて」など、マスの指示に従う
②西東京市子ども条例(以下、条例)のカードを引く
③「マジか!カード」を引く
の主に3種があり、特に②③が特徴的。
②は条文が書かれたカードを引くもので、その場で読み上げ、「生存」「発達」「参加」「保護」の4枠があるシートに置いていく。その際、条文がどこに分類されるかを参加者で話し合う。一つの条文で複数の要素を持つものもあり、時には参加者の見解が割れるのも面白さの一つだ。
③は、理不尽な仕打ちへの嘆きが書かれたカードを引いていくもので、その場で読み上げ、全員で「マジか!」と突っ込みを入れる。体験してみると、最初は照れくさいものの、続けているうちに子どもの怒りを代弁しているような高揚感があった。カードの文面は同市内で実際に子どもたちから集めたもので、「『やる気がないなら帰れ!』と言われて帰ったら『何で帰ったんだ!』と怒られた」など、リアリティがあり、共感できることも多い。
ゴールするのは寂しい
同すごろくを作製したのは、市内でこども食堂の運営などをする「西東京わいわいネット」と同市公民館。子どもを守る条例が市にあることをもっと広めたいと企画したもので、実際の作業のほとんどは、こども食堂のボランティアや公民館講座に参加してきた10代、20代の若者たちが担った。
すごろく自体は勝ち負けを競うものではなく、作製メンバーの渡邉みのりさんは「わいわいと、盤上を行ったり来たりするのを楽しむすごろくだと思っています。むしろ、ゴールするのは寂しいですね」と笑う。
子どもと大人が一緒に遊べるのがすごろくの魅力
昨年12月にはお披露目のイベントも開かれ、小学生も集まって、会場中が「マジか!」と盛り上がった。企画を担当した同市公民館の松永尚江さんは「子どもと大人が一緒に遊べるのがすごろくの魅力。楽しいし、学びも深まります」と話す。
同すごろくは同市の6公民館に常備しており、貸し出しが可能。作製メンバーの大学生・小林穣太郎さんは「僕もそうでしたが、子どものための条例なのに、子どもたちがその存在を知らずにいる。条例を活かすためにも、このすごろくを通して、多くの人に条例のことを知ってほしいです」と話している。
詳しくは同市保谷駅前公民館(☎042・421・1125)へ。
【取材余話】
「一緒にやってみましょう!」と誘われ席に着いたが、すごろくって、どうやるんだっけ? とまずはそこから。一番にゴールすることを目指したが、このすごろくではどうやらそれは本質ではない様子。「?」と迷いながらゲームに向き合っていたが、だんだんと会話が増えるに従い、楽しくなっていった。馴染むまでに少し時間がかかるかも。子どもたちにとっては、「子ども条例というものがある」と知れる良いツールといえそうだ。(谷)