[この町この人]絵と詩で生命に触れる 近森有造さん

2023年10月3日

水墨画の個展を開催する元中学校教諭

元中学校教諭。国語科を担当しながら美術部顧問などを務め、この地域でも、西東京市立ひばりが丘中、田無一中、田無四中で教壇に立った。プライベートでは10代から絵と詩の創作を続けており、退職した今は、一日の半分近くを筆を手に過ごす。8日㈰から22日㈰まで、同市にあるギャラリー「8cho8ma gallery」(向台町4の17の8)で、水墨画の個展を開く。

 

日府展で東京新聞賞を受賞した水墨画作品「海嘯」の前で

 

仮死状態で生まれ、死が身近な幼少期

幼少時、体が弱かった。仮死状態で生まれ、滲出性中耳炎で毎日投薬され、小学3年のときにはネフローゼ症候群に。3、4カ月の自宅療養で改善するも、再発した2年後には、医師から親が呼ばれ、「尿毒症が出たら手の施しようがない。覚悟しておいてください」との宣告まで受けた。

そんな日々で考え続けたのは「死んだらどこに行くのか」ということ。ある日、顔なじみの僧侶から「死んだらな、別に透明な丸い世界があって、そこで生きられるから大丈夫だよ」と言われ、よく分からないながらも不安が薄らいだ。

 

文学と美術は両輪

気持ちが落ち着くと、創作や文学に心が傾いた。「人間の生き死にの深いところに関わっている」という感覚から、特に絵と詩に親しんだ。色弱ぎみだったことから美大はあきらめ、文学を専攻。国語科の教諭になった。

絵と詩は両輪。「誰に見せるでもなく」続けてきたが、20代後半で絵画は水墨画に絞り、今は絵を描く時間が長くなっている。

「『人、墨をするにあらず。墨、人を磨く(人非磨墨、墨磨人)』という言葉がある。墨をすること自体で自分を磨いているという感覚。墨の香りを嗅ぎながら気持ちがすーっと落ち着いていくのが好きですね」

 

一つでも「生命」というものに触れられたら

教諭仲間の勧めで、美術展に出展し始め、以降、受賞することもしばしば。創作意欲は高まる一方だが、描くテーマは一貫して変わらない。

「山や海、自然――。子どもの頃から親しんできたそういうものが、自分の生きる根っこにある。それを描き、一つでも『生命』というものに触れられたなら、いつ息を引き取っても構わないなと思っています」

ちかもり・ゆうぞう 1954年高知県生まれ。中学校教諭の傍ら、詩の同人誌などを続けた。日府展にて日府賞(最高賞)、東京新聞賞、日府努力賞、日美展にて国際文化カレッジ賞の受賞歴あり。詩集に『今を生きる』がある。

     ◇

個展「愛しき生命(もの)達」は、8日から22日まで開催。正午から午後5時(22日は4時)まで。水墨画20点以上を展示。詳しくは同ギャラリー(☎042・466・9883、https://8cho8ma-gallery.jimdofree.com/)へ。

8cho8ma gallery

個人宅をギャラリーに! 西東京市向台町の圡方さん

西東京市向台町の圡方隆一さん・仁美さん夫妻が、このほど、自宅の一部を改築し、「8cho8ma gallery(はっちょうやまギャラリー)」をオープンする。初回の展示会は6日㈮から。「若手作家を応援した ...

編集部おすすめ

1

弱者に優しい社会へ、情報共有を 44歳で肺腺がんステージ4と診断され、2人の子どもを育てながら闘病を続ける水戸部ゆうこさん(50)の企画で、23日㈯㈷に小平市中央公民館で、がん関連の情報を広く伝えるオ ...

2

二十四節気の立冬(7日)と小雪(22日)を迎える11月は、いよいよ冬の始まり。 二十四節気とは、1年を24の期間に分け、それぞれ季節的な特徴を表す名称をつけたものです。 すこし前のデータになりますが、 ...

3

11月23日、市民の企画で 参加者募集中 西東京市と周辺市区を舞台に、時間内にできるだけ多くのチェックポイントを回って得点を集めるイベント「西東京シティロゲイン2024」が、11月23日(土)に開かれ ...

4

ワークショップのお披露目、トークセッションも 誰もが生きやすい社会を目指して、主に映像を用いた地域交流イベントやワークショップなどを行っている「にじメディア」が、11月28日(木)から30日(土)まで ...

5

 27階建て大型ビルの工事現場に、市民の思いを 公共施設が入る予定の工事現場の仮囲いに、小平の未来のイメージ画を飾ろう――。 西武国分寺線・拝島線「小川駅」西口前で建設中の再開発ビルを巡り、 ...

Copyright© タウン通信 , 2024 All Rights Reserved.