6年後には里親家庭で暮らす子どもを都内で倍以上にしたい――今年4月に小平児童相談所の里親支援業務がフォスタリング機関事業として民間委託され、サポートの充実が進められている。里親制度や今後の課題について、受託するNPО法人キーアセットを取材した。
親の病気や虐待などの理由で親と一緒に過ごせず、社会的養護を必要としている児童は都内で約4000人(全国では約4万2000人)。このうち、里親家庭で暮らす児童は16・8%の状況となっている(全国では23・5%。2021年度末時点)。
現状では施設養護が主流となっているが、子どもの成長にとっては家庭と同様の環境で過ごすことが有意義といえるため、都では6年後の29年度には里親等委託率を37・4%にまで高める推進計画を策定している。現状の倍以上という高い目標だ。
その推進の手段として里親支援のノウハウを持つ民間への事業委託が行われており、現在、10ある都の児童相談所のうち、5相談所で取り入れられている。東京都は小平児童相談所のフォスタリング機関として、約10年前から各地で実績のあるキーアセットに委託した。フォスタリング機関とは、里親養育の包括支援を行う機関を指す。
「私たちが担うことで、里親の広報・リクルートから、子どもの自立後の支援まで一貫して一つの機関でできるようになります。また、PRイベントなど、積極的な仕掛けも行えます」
民間委託の利点をそう説明してくれたのは、同NPО・里親リクルーターの加藤薫さん。
もちろん、民間委託ですぐに里親等委託率が上がるというものではない。当面の課題は、里親への理解と、担い手を増やしていくことだ。
「里親制度を誤解している方が少なくないので、まずは知っていただけたらと思っています。例えば、里親になったら18歳まで育てなければいけないと思われがちですが、数日から数カ月だけ預かるという短期の場合もあります。また、養子縁組を目的とした里親でなければ、預かる子どもが里親の戸籍に入ることもありません。里親にもいろいろな種類があるのです」
と、区市町村連携コーディネーターの坪井惠子さん。受け入れる子どもについても、通常は数カ月かけて交流を図っていくので、突然見知らぬ子が来るというものではない。養育にかかる費用等は東京都の公費で支払われる。
また、社会的養護を必要とするのは乳幼児だけとは限らず、過去には、友達との会話で自分が虐待を受けていたことに気づいた高校3年生が、交番への相談から児童相談所、里親家庭へとつながり、安心できる環境を得て、念願の大学進学を果たしたケースもあったという。
「里親になる方が増えてほしいですが、そうでなくても子どもたちのためにできることはたくさんあります。この地域にも里親家庭があることを理解し、子どもたちに心を寄せていただけたらと思います」
と加藤さん。
同NPОでは、随時、里親の相談に応じている。興味がある人は気軽にお問い合わせを。
◆キーアセット東京事務所
☎042・314・9031
◆小平児童相談所
☎042・467・3711
◎キーアセット https://kiiasetto.or.jp/
◎小平児童相談所 フォスタリング機関 キーアセット https://kodairafostering-kiiasetto.jp/