保谷こもれびホールに関わる市民が語らい
将来への不安をぬぐえない社会情勢のなか、地域の各所で、人々をつなごうとする活動が見られている。その代表例が「子ども食堂」だ。今回、新春企画として、西東京市保谷こもれびホールで開かれている子ども食堂にボランティア参加するメンバーに集まっていただいた。座談会で語られた、一人ひとりの思いとは――。
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「こども食堂 もぐもぐ」は、同ホール内のカフェラウンジ「はなみずき」を利用して月に1回開かれている。昨年6月のスタート以降、毎回100人前後が来るほどにぎわっている。文化施設の強みで、絵本の読み聞かせや紙芝居などのイベントもできるのが特徴だ。
当初は「町の文化施設としての地域貢献」で始まったが、今では、食材を提供する協賛団体や市内・近隣に住む人たちがボランティアで運営に大きく関わっている。その一人で米を提供している市内の「野口米店」店長・野口晃さんは、協賛の動機を「日本国内では、米は自給率ほぼ100%。その提供は米店の責務だと思った」と話し、こう続ける。
「子どもたちに手作りのおいしさを伝えたい。心を込めて、人の手で握ったおにぎりのおいしさをね」
同じく、野菜を提供している市内の「風琳青果」の店長・大澤俊光さんは、孤食が多い現状に心を痛めている。「大勢で食べるご飯のおいしさ、温かさを子どもたちに知ってほしい」という思いで協賛を決めた。
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開店時の受付や接客を担うのもボランティアの人たちだ。子どもだけの来店も少なくなく、コミュニケーションが必要となる場面は多い。
ボランティアの今中友子さんは「まずは声をかけますが、子どもの様子次第で、今日はそっとしておこうとか、そんな気配りも大事です」と話す。
最初はそっけなくても、回を重ねるうちに心を開いてくれることは珍しくない。
また、根本京子さんは「子どもと直接話すことでその子の状態を直に知ることができ、年長者なりのアドバイスができたりします。生きがいを感じる瞬間です」と、ボランティアが自身のやりがいになっていることを口にする。
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実は、「こども食堂『もぐもぐ』」は本年3月で終了となる。同ホールの指定管理者が替わるためで、今後の開催などについては未定だ。
しかし、関わってきた人たちは皆、「この経験を生かしたい」と強く声をそろえる。
果物を提供する西京信用金庫保谷支店の支店長・山口政明さんは「子ども食堂のご飯と果物が、子どもたちの心まで満たせれば。そして、彼らが大人になったとき次の世代へと新たな支援をつなげていってくれたらと願います。そんな循環を信じてこれからも支援したいです」とほほえむ。
また、最年少でボランティア参加する武蔵野大学3年生の古橋浩太さんは、「我々若い世代が地域の未来を担っている。誰もが安心して暮らせるまちづくりのために何ができるか勉強をしていく」と目を輝かせた。
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同ホールの指定管理者・㈱JTBコミュニケーションデザインの芦田さんは、「子ども食堂を通じて共助の輪が広がり、この先の地域の未来につながっている。築いてきたつながりはぜひ継続させたい。公共施設の枠を超え、子どもの安全な居場所作りを追求し続けていく」と話している。
なお、座談会には行政関係者も参加した。西東京市文化振興課の笹野隆さんは「『もぐもぐ』はホール内のカフェ運営の一つの提案」と評価する。「初回から回を重ねるごとに工夫を凝らし、地域の人たちの協力も増えていると感じる」
また、西東京市ほっとネットステーションの長谷川恵弥さんは「今後もいろいろな場所・形態で行ってもらえるとありがたい」と期待を寄せた。
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次回の「もぐもぐ」は28日㈯午前11時から午後3時まで開かれる。300円(高校生以下無料)。メニューは当日決定予定。
詳しくは同ホール(☎042・421・1919)へ。
(取材記者・三好圭子)