小平市で最晩年を過ごし、同市名誉市民でもある巨匠彫刻家・平櫛田中の回顧談が、生誕150年の節目に合わせて発行された。1965年(94歳時)に語った、生い立ちから東京美術学校(現・東京藝術大学)で教えていた頃までを振り返ったもので、修業時代の思い出や、大家・岡倉天心や横山大観の知られざるエピソードなどが、多彩に盛り込まれている。
もともとは、出版社による美術家の論集シリーズの一つとして企画されたインタビューだったが、「確認したい」という平櫛田中の手元に原稿がとどまっているうちに平櫛が他界したため、お蔵入りとなっていた。インタビューと原稿のまとめは、東京国立近代美術館次長などを歴任した美術評論家・本間正義さん(故人)が務めていた。
「内容が貴重なので、いつか出版したいと願っていました」
と話すのは、書籍化に向けて原稿を編集した、小平市平櫛田中彫刻美術館学芸員の藤井明さん。これまで研究用に活用していたが、「独占しているような決まりの悪さを感じていた」という。
「話し言葉なので読みやすく、エピソードも満載で面白い。平櫛田中を知らなくても楽しめる一冊です」
と藤井さん。
2420円、中央公論新社。なお、同館では27日まで、特別展「平櫛田中 生誕150年展」を開催中。同館でも同書を販売している。