医針伝心
土居治療院 土居望院長コラム
日本人の4人に1人は腰痛持ちであるという。推定2800万人~3000万人。
腰痛を大きく二つに大別すると、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離すべり症といった原因の特定できる特異的腰痛と原因の分からない非特異的腰痛に分けられる。
日本整形外科学会、日本腰痛学会の「腰痛診療ガイドライン2012」では、下肢症状を伴わない腰痛の場合、その85%が、原因を特定することが困難である非特異的腰痛とされた。この非特異的腰痛が85%を占めるという言葉が独り歩きしてしまい、ほとんどの腰痛が原因不明という印象が広まっている。
はり治療を科学的(病理解剖学的)に考察し直すと、腰部の構成体は、5つの腰椎とそれぞれの椎間板、椎間関節、靭帯、骨を支える筋肉と筋膜、骨の中心を通る脊髄、神経根である。非特異的腰痛が画像上の骨格構造に異常がないのであれば、痛みの原因は腰を支える筋肉か筋膜、椎間関節のどこかにあると考え、痛みの位置から異常部位を想定してそこに針先を入れればよいと考えるのである。
痛みの原因が何であれ、例えば、筋膜に針先を入れたとき、痛みが急に緩和したならば、その腰痛は腰の筋膜の異常であることが分かる。このようなはり治療は、画像検査などを行った医師の手によって行われることが最も望ましく効果的であろう。時間も数分、数本のはりで十分効果があり再現性がある。
近未来、テクノロジーはビッグバン的に進化するはずである。それは、医療の場でも急激な大改革であろう。AI(人工知能)によって病気の診断、治療が行われる時代、取り残される人たちとは原因の特定できない非特異症候群に苦しむ多くの人たちと筆者は考えているからである。
プロフィール
土居 望