すべての人にオシャレを!
シニア、妊婦、療養中の人――脱ぎ着のしやすい服を求める人たちに、おしゃれなそれを提供したいと、この春、起業した。デザイン、型取り、裁縫、販売まですべて自分一人で行う。来月には個展も開く。
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その服のコンセプトは、「おしゃれ」と「着脱のしやすさ」。ストレスフリーなお出かけ服、と銘打つ。
多くの作品で取り入れているのは横が大きく開くデザイン。複数のボタンを配置し、自由に開閉ができる。胸側・背中側の区別を付けないのも特徴的。気分や事情に応じて、好きなほうを前にして着られる。
「前後や裏表の両面を使えるようにすれば、それぞれの身体のご事情に合わせて脱ぎ着していただけます。おしゃれという点でも、1枚で変化が付けられますしね」
具体的にはこんな場面をイメージしている。例えば右腕にマヒのある人の場合。先に右手を袖に通して左側のボタンを留めれば、着脱は容易だ。左手にマヒがあるなら、その逆にして着脱ができる。
こんなユニークな発想の元になったのは、自身の入院経験。面談が制限されたコロナ禍の中での入院のため、病院の寝間着をレンタルするしかなかった。が、その色・デザインはまったく気に入らないもの。しかも、横たわったままでの着脱は困難だった。
「病人だからおしゃれは不要というのは間違っている。むしろ病気で落ち込んでいる人にこそ、おしゃれな服で気持ちを明るくしてほしい」
そんな思いが強くなり、機能性とおしゃれを追求した洋服を考案。横が大きく開くデザインは、寝たままでの着脱のしやすさや、検査や点滴のときに対応しやすいという観点から生まれた。
これを広めたい、と起業し、発想を広げると、対象は、身体に後遺症のある人や高齢者、妊婦など、多彩にいるのが見えてきた。今は女性向けのみだが、いずれは男性向けの洋服も視野に入れている。
店舗は持たず、当面はイベント開催やネット活用などを試していく予定。その始動を、来月に控えている。
「女性は、何歳になっても、どんな境遇でもおしゃれを楽しみたいもの。あきらめていた方に、喜んでもらえたら」
まだ手探りの状態だが、ブランド名だけは明確に決めた。その名は″オリーブグリーン〟。さまざまな色が混ざらないとできない色。「いろいろな人の思いをつないでいきたいのです」
◆たかの・じゅん
1956年宮城県出身。女子美術大学芸術学部工芸科で染織を学び、その後、大手百貨店勤務。結婚・出産に伴い退職後、トールペイント教室を主宰、再び同百貨店勤務を経て、合同会社オリーブグリーン創業。2級色彩コーディネーター、パーソナルカラーアナリストなど服飾にも関係する資格を複数持つ。
同社への問い合わせは(☎042・456・8003、インスタグラム=olivegreen422)へ。