[この町この人]昆虫はなくてはならない! 昆虫研究家・北原俊幸さん

2022年8月3日

東久留米の「昆虫展」に標本を提供する昆虫研究家

4万点を超える昆虫標本を作製してきた昆虫研究家。多摩地域の昆虫を多く採集し、その標本のほとんどを東久留米市に寄贈している。

先週から同市郷土資料室(わくわく健康プラザ内)で開催されている「夏の昆虫展」では、数多くの標本の中から抜粋された、この地域でよく見られる昆虫約1200種が展示されている。

昆虫標本を手にする北原俊幸さん

  

小5で清瀬市に移るまで暮らしたのは、渋谷・原宿。1950年代の当地は野原の多い場所で、身近なところでさまざまな昆虫と出会えた。

採集のきっかけは、父親。父子共に体が弱く、「外出の機会に」と一緒に出掛けたことから世界が広がった。

「そこにいる昆虫は何でも捕る」

というのがスタイル。チョウやトンボ、カブトムシなど採集の好みをはっきり持つ愛好家が多いなか、ガでも蜂でも何でも捕り、時には嫌われものの害虫もコレクションに加える。

だが――。昆虫を追った夢のような時間は、25歳まで。学校教諭になり、部活動の顧問も務めると、途端に自由な時間がなくなった。

それからおよそ半世紀。この間に環境は激減し、東京近郊では、身近で昆虫に出会うことが少なくなった。昆虫に触れない、という子も珍しくない。

「昆虫は子どもにとってなくてはならないものなのに――」

学校長まで務めた元教諭として、子どもたちが置かれる状況への危機感は強い。

「子どもは小さな動くものに興味を引かれるものです。それを追いかけていくうちに、新しい何かにどんどん出会っていく。その最初の入り口にいるのが昆虫なのです」

人が生き物と出会うという意味でも昆虫の存在は大きい。だからこそあえてこの昆虫展では、ガなどの「きれいとは言えない」昆虫も紹介している。多摩に生きる、身近な生き物の一員として。

きたはら・としゆき 1950年、東京都生まれ。清瀬市、東久留米市に暮らし、現在は長野県在住。著書に『多摩の昆虫』(東久留米市教育委員会文化課)。現在、東久留米市文化財保護審議会委員を務める。

     ◇

「夏の昆虫展」は31日㈬まで。日祝休館。展示は午前9時から午後4時30分まで。8日㈪から10日㈬の3日間は北原さんの解説あり。午前10時からと午後3時からの2回(各回先着15人、当日受け付け)。

問い合わせは郷土資料室(☎042・472・0051)へ。

編集部おすすめ

1

弱者に優しい社会へ、情報共有を 44歳で肺腺がんステージ4と診断され、2人の子どもを育てながら闘病を続ける水戸部ゆうこさん(50)の企画で、23日㈯㈷に小平市中央公民館で、がん関連の情報を広く伝えるオ ...

2

二十四節気の立冬(7日)と小雪(22日)を迎える11月は、いよいよ冬の始まり。 二十四節気とは、1年を24の期間に分け、それぞれ季節的な特徴を表す名称をつけたものです。 すこし前のデータになりますが、 ...

3

11月23日、市民の企画で 参加者募集中 西東京市と周辺市区を舞台に、時間内にできるだけ多くのチェックポイントを回って得点を集めるイベント「西東京シティロゲイン2024」が、11月23日(土)に開かれ ...

4

ワークショップのお披露目、トークセッションも 誰もが生きやすい社会を目指して、主に映像を用いた地域交流イベントやワークショップなどを行っている「にじメディア」が、11月28日(木)から30日(土)まで ...

5

 27階建て大型ビルの工事現場に、市民の思いを 公共施設が入る予定の工事現場の仮囲いに、小平の未来のイメージ画を飾ろう――。 西武国分寺線・拝島線「小川駅」西口前で建設中の再開発ビルを巡り、 ...

Copyright© タウン通信 , 2024 All Rights Reserved.