西武池袋線の歴史から地域が見えてくる――このほど、普段は保谷駅を利用するという萩原恵子さんと松田宗男さんが、鉄道や駅の歴史を調べて冊子「武蔵野鉄道が通る! ―保谷周辺を中心に―」を作成した。冊子は、西東京市図書館などに寄贈している。
二人は、郷土史を研究する「下保谷の自然と文化を記録する会」に所属しており、以前から、鉄道敷設について関心を持っていたという。
ところが、地域の大動脈であるにもかかわらず、その歴史をまとめた文献・資料がなかったため、「たとえ不完全でも、分かったことを記録にして残せれば」と自分たちで取り組むことにした。
冊子は、計画が実現しなかった‶幻の鉄道″の存在や近隣の鉄道敷設といった「前史」から、西武池袋線の前身となる武蔵野鉄道発足の様子、さらに、所沢駅から池袋駅までの主要駅の歴史をまとめている。
駅ごとの歴史では、地域の人々の誘致・反対運動が各所で行われていたことが分かり興味深い。
東久留米駅は…
例えば、東久留米駅は、当初、2案あった武蔵野鉄道の計画では存在していなかったという。それに対して熱心な誘致活動をしたのが神藤庄太郎で、その座像が同駅北口近くに建立されている。当初は必要性の少なかった同駅だが、後に、軍需工場の中島航空金属への引き込み線が敷かれ、さらに、ひばりが丘団地造成に役立っていく。鉄道から地域が開かれていくのが目に見える好例だ。
「西武線は私の人生のほとんどでそばにあった。小さな情報でも失ってはいけないものがある」と松田さん。また、萩原さんは「地主、株主、農家の方など、鉄道敷設をめぐってそれぞれの思惑が見えてきて面白い。市民が地域を知るきっかけになれば」と話す。
貴重な写真も多く、眺めるだけでも楽しい一冊。A4判、45ページ。