多々困難経て夢の独立開業
西東京市中町の農園の一角に、キッチンカーでイタリア料理を提供する「Fiо Nuku(フィオヌク)」が6日にオープンした。採れたての旬の野菜を用いたパスタなどを、テイクアウトのみ、ランチタイムのみで販売している。そのスタイルになった背景には、深いワケがあった――。
同店が提供するのは、日替わりメニューのセット。
取材で訪ねた日は3種類あり、「たっぷり野菜のスパゲティ」(サラダ付き、900円)、「ボロネーゼスパゲティ」(同、1000円)、「お肉と前菜のもり合わせ」(800円)というもの。「たっぷり野菜~」は、新玉ネギ、スナップエンドウ、菜の花、長芋などの食材で、畑で採れたばかりの野菜が用いられていた。
これらのメニューは持ち帰りのみで、営業は月~土曜の日中のみ(午前11時~午後3時ごろ。売り切れ次第終了。臨時休業あり)。このような、畑の隣に常設しテイクアウト専門で営業というスタイルの裏には、実は、人知れぬ事情があった。
コロナ、シェフの大病
同店を開業したのは、この農園が実家という貫井昭洋さん(33)。高級ホテルのレストランなどで経験を積み、料理人としてのキャリアは約15年になる。
いつかは地元で店を――と料理人になって以来目指してきた貫井さんは、独立を決意してテナント探しを始めたが、間もなくコロナ禍に遭遇。さらに、自身が脳腫瘍で倒れるという思いもしない事態が生じた。
昨年2月に手術をし、現在は日常生活を支障なく送れるようになっている。とはいえ、過労は禁物。「無理はせずに、地元野菜を用いたイタリアンベースの料理を提供したい」と、キッチンカーでの開業に行き着いた。
「発病にぼうぜんとしましたが、次に何ができるかをずっと考えてきました。キッチンカーではできることに限りがありますが、堅苦しくなく自由にやれる良さもある。野菜をおいしく味わえる調理の仕方などを、皆さんにご提案できれば」
と貫井さん。
場所を提供する父の耕一さんは「店を持つことがずっと夢だったのを知っていたので、協力できてうれしい。農園の直売所を設けているので、併せてご利用いただきたいですね」と頬を緩める。
ちなみに、同農園はナシ、ブドウをメインに、キャベツ、トマト、ナス、キュウリなど多種の野菜を収穫している。
なお、オープン以降、予想以上の客足があり、仕込みなどで多忙を極めているため、今後、営業日を減らす可能性があるという。料理は予約可能。
住所は西東京市中町5の3の20。詳しくは同店(☎090・6947・3514)へ。