在宅診療NOW
まつばらホームクリニック 松原清二院長のコラム
在宅で患者さんを診ているとさまざまなご家族にお会いします。初診の時にお会いするご家族、お見舞いに来られてお会いする遠方にお住まいのご家族、患者さんの容態が悪くなった時にお会いするご家族などなど。
通常の診療では、こちら側と家族側の意見を滞りなく交わしていけるように、ご家族側で1人キーパーソンを決めてもらい、その方にお話をするようにしています。
先日、一人暮らしのがんの男性で、数十年来のご友人に何かと面倒を見てもらっているという方がいました。初めの頃は学生時代の成績自慢をお互いにされていて、「忌憚なく言い合える家族以外の古い付き合いは羨ましいなあ」と思っていました。ご友人は、抗がん剤治療の投与の適応などで地域の基幹病院に行く際には付き添いをし、その状況を私にこまめに連絡してくださり、緩和医療に移行する話が出たときにも、「最期を自宅かホスピスかにするかは、本人の意思を尊重したい」と話されていました。
ところが……。終末期になると、遠方のご家族がお見舞いに来て、残念ながらご友人が終末期に関わることができなくなってしまいました。ご友人は、とても寂しがっていました。
日本では医療の意思表示は本人、本人の意思表示が難しければ家族が行うことになります。代理の医療同意権は、他の方は認められていません。
リアルワールドでは、法律と現実のギャップを考えさせられることが多いです。
プロフィール
松原 清二