医針伝心
土居治療院 土居望院長コラム
子どもの頃、窓ガラスにできた雪の結晶を虫メガネで見たとき、その美しさに自然の不思議を感じたものである。無学な私は、その結晶が数学的無限大を含むフラクタル構造であると知ったのはだいぶ後のことであった。
フラクタルとは、全体を小さく分割した部分のどこをとっても全体と同じ構造を持っていることである。ツボ治療で言えば、耳や足に全身のツボがあるという耳ツボや足ツボはこの考えから生まれたものであろう。東洋医学は自然界の仕組みと全て一致しているはずだからである。
話を戻して、樹木などの植物は一見不規則(カオス)に生長するが、それをグラフにプロットするとそのグラフはフラクタルな性質を示す。人体においても、肺の内腔、腸の内壁、神経や血管の分岐構造はフラクタル構造であるが、そこには自然界と生命の仕組みが隠れているのだと思う。
例えば、人体の血管を毛細血管を含め一本につなげるとその長さは10万キロメートル、地球を2周半もしてしまうという。それは生きるために必要な長さなのであろうが、血管の配置はガス交換のために血管表面積は可能な限り大きいほうがいいが、小さな人体の体積は有限で血管の占有する体積は可能な限り小さい必要がある。この場合、有限の体積の中に無限の表面積を包含できるフラクタル構造は合理的かつ効率的な自然界の仕組みだからである。
プロフィール
土居 望