60年前のロボットを稼働 “遺品”の相澤ロボットの初披露も
多摩六都科学館に、貴重なロボットが常設展示されているのをご存じだろうか――。旧保谷市で約800体も作られたといわれる通称「相澤ロボット」は、1970年の大阪万博で展示されたり、台湾や上海のイベントに出展されたりと、国内外の子どもたちを魅了した。
そのうちの2体が同館にあり、現在会期中の「ロクトロボットパーク」では、期間限定の稼働や、知られていなかったロボットの初披露がされている。
保谷を拠点に生まれた相澤ロボット
「相澤ロボット」は、技術者の相澤次郎さん(1903年―96年)が製作指揮を執って生んだロボットのこと。
30年代から80年代までの長い期間にわたって作られ、各地のイベントに出展された。子どもたちに夢を与え、科学技術の面白さを伝えることが目的で、四角い顔に大きな丸い目など、親しみやすい姿が特徴。電力で実際に動くものもあった。
これまで現存するのは11体とされ、そのうちの2体が多摩六都科学館で常設展示されてきた。同館だけ常設展示ができているのは、相澤さんが旧保谷市に暮らした縁から。展示には破損の懸念などが付き物だが、管理する「(公財)国際医療福祉教育財団」が「地元での展示なら」と理解を示しているという。
貴重な存在 ミスタースパーク
特に、2体のうち「ミスタースパーク」というロボットは1962(昭和37)年の製作で、塗装や部品などが当時のままで残る貴重なロボット。約100キロの重量で、立ったり座ったりができるが、その性能ゆえに転倒が心配され、あまり外に持ち出されなかったのが幸いした。
頭部には電飾が付いているが、これはクリスマスのデコレーションや、仏壇に置くイミテーションのロウソクを転用したもの。専用の部材がないなかで、創意工夫で製作されたことを今に伝える。
「ほかのロボットでは、トラックのライトやミシンのペダルなどが使われています。その工夫に驚きます」
相澤ロボットの修復に携わり、「ロボットパーク」の協力もする株式会社MANOI企画の代表・岡本正行さんはそう話し、同科学館と相澤ロボットの関係を「日本の科学技術において重要なもの」と評価する。
「今の日本の教育では、幼少時にロボットに興味を持っても、中学生になると部活や受験で途絶えてしまう。その隙間を埋められるのは、このような地域の科学館。日本の科学技術が世界から遅れ出すなか、地元にあった夢が次世代に引き継がれたら素晴らしい」
ロボットパークでは体験型も豊富に
同科学館では例年冬季に「ロボットパーク」が企画されており、この冬も1月10日まで開かれている。
普段は行わないミスタースパークの稼働のほか、ロボットバトルやサッカーなどの体験型の展示を多数行う。
岡本さんによると「(人手がかかるため)体験型展示がこの規模で揃うことはほとんどない」そうで、ロボットの操作体験の点でも貴重な機会となりそうだ。
なお、今回、これまで知られていなかった15体セットの「ロボット楽団」が初披露されている。
これは昨年、遺族から公開されたもの。相澤さんの遺品として大事にされてきたものだそうで、一切修繕を行わずに展示されている。
入館料のみで見学・参加できるが、新型コロナウイルス感染予防のため、入室制限などが行われる場合がある。
詳しくは同館(042・469・6100 公式ホームページ)へ。