今年2月に行われた西東京市長選挙について、西東京市長選挙・異議申し立ての会(総代 山口あずさ)は8月、東京高等裁判所に提訴をした。11月11日の判決で、東京高等裁判所は原告の請求を棄却した。
西東京市長選挙の異議申し立ては、選挙の期間中に、池澤隆史市長の確認団体「明日の西東京市を創る会」が市内全戸に配布した法定ビラ2号(以下2号ビラ)の内容を違法だとして、2月22日に西東京市の選挙人60人が「西東京市長選挙の効力に関する異議申し立て」を同市選挙管理委員会に行ったことから始まる(詳細は、当サイト記事https://www.town-t.com/?p=17382)
選挙の無効を訴えたが棄却、続けて東京都選挙管理委員会に審査の申し立てを行ったが、こちらも棄却となった。
だが、選管とのやり取りの中で、当初問題としていた2号ビラだけではなく、1号ビラについても裁判所の判断を仰ぐ必要があると認識した同会は、8月半ばに西東京市長選のやり直しとビラ1号及びビラ2号が氏名類推事項として違法であると、東京高等裁判所に提訴をした。9月28日第一回口頭弁論で結審となったものが、10月14日に弁論再開となり、氏名類推事項として新たな証拠が採用された。原告有利な展開で画期的な判決が出ると期待が高まっていた。
今回の裁判の論点の一つは、公職選挙法にある「確認団体が作成するポスターやビラに候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載したものを使用することができない」という規定に対して、問題の法廷ビラが抵触するのではないかということにあった。1号ビラ「前副市長」は池澤隆史氏を、2号ビラ「逗子」は平井竜一氏を類推させる。
今回の判決では、法定ビラが「特定の候補者の氏名類推事項が記載されている」と判断、違法性は認められたといえる。だが「選挙人は、新聞報道や選挙運動などを通じて情報を取得し、その情報を自ら取捨選択して投票行動を決定する」とした上で、「法定ビラの頒布により選挙地域内の選挙人全般がその自由な判断による投票を妨げられたとは認められない」と結論づけた。
判決後の記者会見で、原告の山口あずささんは、
「ビラの違法性を認めたにも関わらず、選挙の無効を認めないのは非常に遺憾」
と憤る。
「今回の判決は、違法なビラを使用した選挙が許されるということです。『いじめ』に当たるビラが許されるということ、大人がいじめを肯定しているのです。これを子どもたちにどう説明すればいいのでしょうか。西東京市をそのような町にしたくはありません」
今後は上告も検討するという。
公正な選挙を訴える「絵本」プロジェクト発足
また、西東京市在住の星出卓也さんによる「私たちの一票を守るためのプロジェクト」が発足、クラウドファンティングが開始されている。子どもたちにも恥ずかしくない選挙と民主社会を作ることを目指すこのプロジェクトには星出さん、山口さんほか4名の市民が参加している。
正しい選挙を訴えるために「どうぶつ村のせんきょ」と題した絵本を制作し、民主主義の根幹である選挙の在り方を世に問い、絵本と言うツールを通して、子どもたちと一緒に考えていくことを目的としている。支援金は絵本の制作費のほか、裁判費用に充当される。
(取材記者:三好圭子)