新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、西東京市は3密を避けることを目的として、9月6日から市内小・中学校全27校でオンライン授業を実施しています。
タブレット操作に不慣れな小学一年生や特別支援学級は通常どおりの対面授業とし、給食は登校して、各教室でグループ毎に時間を分けて食べたり、家庭の住環境や通信環境、保護者の仕事等により家庭学習が難しい場合は『預かり』という形で登校も可能とするなどの配慮がなされています。
今回の決定について、西東京市教育委員会教育部教育指導主事 荒木忍さんは、
「先生との繋がり、学校との繋がり、学びが続いていく安心感を得られたことは大きいです」といいます。
具体的な授業方法は?
オンライン授業はグーグルミートを利用して、課題はグーグルフォームで提出します。
期間中の授業は、各学校の年間指導計画に従い、学校ごとに決定しました。国語・算数(中学は数学)・理科・社会・外国語などを中心に、体育・音楽・図工(美術)なども各学校判断で、創意工夫をして実施しているそうです。
9月8日(水)西東京市立上向台小学校に取材に伺いました。
同校でも、タブレット端末が配付された4月から、高学年を中心に積極的に活用を始めていました。
同校校長 町田元彦校長によると、子どもたちの反応は良く、独学用のソフトeライブラリを朝学習のときや家庭学習の際に、自分からどんどん使っていき、保護者からもありがたいという声が聞かれたそうです。ほとんどの家庭ですでに通信環境が整っていたこともあり、スムーズなスタートが切れたとのことでした。
一方、オンライン授業の実施にあたっては、授業形態がまったく変わることで、教諭側の戸惑いは少なからずあったといいます。
オンライン用のスライドの作成や子どもたちにわかりやすい教材の提示方法、授業内容の検討等を行いました。また、長時間パソコンに接続し続けると、通信障害や子どもたちの健康面にも負担がかかります。そこで、授業内のどのタイミングで接続のオンオフを入れるか等、対面の時よりもさらに細かく指導計画を考えました。
見えてきた課題
同校GIGAスクール推進教師、6年生担任の加藤聡教諭は、オンライン授業を進めていく中で、これはいけるという気持ちをもったといいます。
その理由として、
「予想以上に子どもたちがICTに慣れていました。『コロナ』で子どもたちの遊び方も変化して、すでにオンラインで話したりしていたようですね。子どもの柔軟な発想に教師側が教えられることもたびたびあるほどです」
と話していました。
オンライン授業のメリットについて伺いました。
「オンライン授業では、より多くの子どもの意見を取り入れることができます。集団では発言しにくい子どもが、チャットを使えばとても意欲的に書き込んだり、意見を書いたノートを画面越しに見せたり。手をあげて発言以外の方法でも、主体的に関わることができます。評価の観点も変わるので、子どもたちの自信にもつながるのではないでしょうか」
と、加藤聡教諭。
全体指導、グループミーティングなど多彩に学習
この日、取材した6年1組の国語「熟語の成り立ち」の授業では、大型テレビを併用し、その画面を各自の端末上にも表示させて、全員が共有しやすいように配慮されていました。四字熟語についての課題を与え、一人ひとりが調べる時間をつくったり、チャットを利用してグループごとに話し合う時間をつくったりと、タブレットを存分に活用した学習が行われました。
子どもたちは慣れた手つきでタブレットを扱い、検索をしたり、イヤフォンを耳に、画面越しの友達と話し合い、ときには笑顔を見せながら取り組んでいました。音声が聞こえにくい状況になった際には、すぐに文字を入力して伝える等、臨機応変に対応していました。
6年生の教諭の方々からも、大きなトラブルもなく、子どもたちがスムーズに行えていることに安心する一方で、
「一方的に指示を出すことが多くなり、どこまで子どもたちが理解しているのか掴みづらい」
「自宅で学習している子どもについて、集中度を確認しにくい」
と、子ども一人ひとりのみとりについての難しさが聞かれました。双方向の授業に向けて、発言の促し方やタイミング、質問の仕方等、オンラインならでのコミュニケーションが求められそうです。
一方、子どもたちの反応は、
「知りたいことをすぐに調べられてとても便利。紙の辞書より使いやすい」
「家にいても、友達と繋がっていると思えてうれしくなった」
「顔が見えない方が話しやすかった」
「機械を使えるようになって自信がついた」
「遅刻や忘れ物の心配をしないですむ」
「学校に行きたくないときでも、勉強できるのが良い」
と、上々です。
オンライン授業の経験を、
「もっと環境が悪くなったときにも、慌てないで対応できると思う」
「今覚えておけば、大人になったときにも簡単にすぐ使えるようになっているので、役に立つ」
と、とても前向きに受け止めていました。
オンライン授業の可能性について、町田元彦校長は、
「得意な教科を担当する教科担任制や、同時に複数のクラスで授業を行うなど、学びの質を高める方法がいろいろあるはずです。将来を見据えて、学校全体一丸となって、どんどんチャレンジしていこうと思います」
といいます。
加藤聡教諭も、
「情報活用能力は、今後生きていくうえで欠かせない。子どもの成長のために必要なことです。
対面に戻ってもオンラインでやれることが分かったことは非常に大きいです。今後も、並行して活用しながら授業を進めていけると思います。何より、学校に登校しにくい子どもでも、みんなと一緒に授業に参加できる。これがいちばん価値あることだと思います」
と話していました。
日ごろから上向台小学校は、教諭同士の連携が強く、他クラスの授業を見にいったりなど、頻繁に情報共有がなされていたそうです。オンライン授業が始まってからそれは一層強くなり、教諭間のコミュニケーションがさらに濃密になったとのこと。連日、子どもたちが帰った後に、学年ごとにその日の授業の振り返りをしたり、縦横関係なく熱心に相談し合ったりしているそうです。
「オンライン授業の決定後、先生方の努力には本当に感謝しています。
職員室のムードがさらによくなりました。どの先生方もとても前向きで、子どもの笑顔が見たい、よりよい授業を提供したい、という熱意が伝わってきます。連携が活性化したと感じています」
と、町田元彦校長は笑顔をみせました。
新しい教育に向けて、新たな取り組みが始まりました。『コロナ』が加速させたともいえる西東京市のGIGAスクール構想。オンライン授業を皮切りに、今後、さらに可能性が広がることを期待します。
(取材記者・写真 三好圭子)