百十三、法則に学ぶ 鍼灸治療

医針伝心

土居治療院 土居望院長コラム

 

ニュートンの運動方程式は天体の星の動きを正確に予測できる。

同じように、波や風といった流体の動きにはナビエ-ストークス方程式があり、時間や空間についての概念は一般相対性理論、ミクロの世界の確率的現象はシュレディンガー方程式、電磁気学においては、マクスウエル方程式というように、自然界は多くの謎を解く方程式と法則によって成り立っていることがわかる。

人体を小宇宙とする東洋医学にもいくつもの怪しげな法則がある。難解なものとしては、難経の法則、六十九難と七十五難の法則であろう。

これを現代風に言えば、『病気を治す、気の力学』のようなものだ。

この法則がなぜ難解かといえば、直感や感覚では理解できるが、その全てが術者の感覚から感覚へと動くものであって、ニュートンの運動方程式でハレー彗星の接近が予言・的中されたような明快な解が存在しない。感覚とは、統一されたものではなく、一人一人の個性を含むものだからである。

こうしたことに気付いた私は、東洋医学ではなく、自然界から学ぶ、新しいツボシステムを考案していった。

今までの鍼灸治療の効果には、古代中国で生まれた気や経絡によるものではなく、全く別の原理が存在している。

その一つがツボの対称性を崩すことによって生じる治癒効果である。

たったこれだけで、難解な東洋医学理論を駆使した鍼灸治療をすでに凌いでいるのである。 

プロフィール

土居 望

「土居治療院」院長。開業37年で、治療した患者はのべ20万人以上。鍼灸師卒後臨床研修指導員。ツボや鍼灸への研究を続けており、独自の治療観を持つ。著書に『鍼灸の奥義、あなたもツボ治療の達人になれる』(青萌堂)、『東洋医学ノート』(法研)がある。TEL042-475-9375。東久留米市東本町13-2。

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