小平・都議選 「無投票」を考える 磯山りょう議員を通して――

無投票で2議席が確定した東京都議会議員選挙の小平市選挙区。ルール上問題はないことは分かるが、どこかスッキリしない印象も……。
その理由を探るに当たり、当選した当人の磯山亮(りょう)都議を訪ねました。
インタビューを通して、現行の無投票がはらむ問題点も見えてきました――。

小平市選挙区のポスター掲示板。2人の候補者の下に、無投票の告知が貼られた

 

市議辞職~市長選落選~都議に無投票当選

無投票が確定したのは、告示日(6月25日)の午後5時。
立候補受け付けの締め切りまでに届け出があったのは、自民党の磯山さん、立憲民主党の竹井庸子さんの新人2人のみで、定数の2議席が確定しました。
都議選での無投票は58年ぶりのことだそうです。

無投票に慣れていないというのもあるが、何か釈然としない感じもします。
理由を考えて、以下の4つが想起されました。

①オリンピックや「コロナ」対策など賛否両論のテーマがあった。有権者には投票できないもどかしさが残る

②定数の多い市議選ならともかく、2議席を争う選挙で立候補者が出ないものなのか

③現職が盤石というならともかく、新人候補が無投票で信任されたといえるのか

④当選した磯山議員は3カ月前の市長選挙に立候補し、落選している

 ***

特に④については補足が必要かもしれません。

磯山議員は小平市議を10年務め、3期目の途中で辞職して市長選挙に出馬。落選を経て今回の都議選に立候補しています。

市議を辞めて市長選、までなら十分理解できますが、落ちてすぐ都議へ、というのはどうかという気もします。

ちなみに、磯山議員が市議を辞めたのは、3期目の任期を半分以上残したタイミングでした。
また、蛇足ながら、報酬も増えることになります(小平市議の月報酬は55万円、都議の月報酬は102万2000円=現在は2割減の81万7600円)

本人の見解を聞きに、事務所を訪ねました。

 

磯山都議との一問一答

磯山都議は、愛知県出身の41歳。大学進学で上京し、国会議員の秘書を経て、2011年に市議に当選。19年には議長にも就任しました。
議長時代は東京都市議会議長会の会長にもなっています。

以下、主な一問一答。

――都議出馬を決めたのはいつ?

「4月末。現職だった高橋信博議員が出ると思っていましたが、勇退されるとなり、私に話が来ました」

 

――市長選出馬の段階で、「落選なら都議へ」とまとまっていたのでは?

「それは絶対にありません。
落選しても、41歳の今なら、まだ新しい世界に飛び込めると思っていました。
先の不安よりも、周りが推してくれるこのチャンスを逃したくありませんでした」

 

――では、「新しい世界」に行かず、今回、都議を選んだ理由は?

「地域のために働くという意味では都議も同じだと思いました。
何より、市長選挙で2万8615票の支持を頂いたことがあります。小平を代表して小平のために働きたいと思ったのです」

 

――無投票をどう受け止めた?

「すぐに選挙管理委員会から連絡が来て、全ての選挙活動を停止するように言われました。政策を訴えられないのは残念でした。

また、選挙は聞く場でもあるのですが、有権者との交流の機会も失われました」

 

――信任されたといえるか?

「投票は行われませんが、立候補者がいて、ルールに従って当選が確定しており、選挙は成立しています。議会では、堂々と自分の一票を行使したいと思っています」

 

――国会と異なる二元代表制の地方選挙なのに、政党の存在が強すぎると感じるが。

「被選挙権があれば誰でも立候補できる。本気なら道は幾らでもあり、政党の問題ではありません。
私は知名度も地盤もないから、自民党の中で地道に積み上げてきたのです」

磯山りょう都議(写真は、市長選挙立候補時のもの)

 

無投票になった瞬間、選挙自体がないもののようになった

この最後の回答を聞いて、この無投票自体はさほど問題ではないという印象を得ました。

磯山議員はそうは言いませんでしたが、言葉の裏には、党の推薦を得るまでにさまざまなふるいにかけられてきた、という意味が込められています。

つまり、党内での支持を得て立候補しているわけで、それまで政治と無関係だった人が気まぐれで立候補したら無投票で当選できた……などという事態とはまるで違うということが断言できます。

その点では、政党主体の選挙には合理性がある、ともいえるでしょう。

しかし同時に、課題があるのも見えてきました。

それは、無投票になった瞬間に、あたかも選挙そのものがなかったもののようにされたことです。

今回、無投票が確定するとすぐに、東京都選挙管理委員会のホームページ上の選挙公報までが消えました。主要新聞の報道でも、無投票の報道後は、小平市選挙区は存在しないもののように扱われることとなりました。

これらは、間違えて投票所に行く人が出ないように、との配慮からのようですが、無投票が確定したことをPRしながら、地域内で政治家が政策を訴え、顔を売ることは可能だったのではないでしょうか。
有権者としても、どういう人がどんな考えで当選したのかは知りたかったはずです。

結果として、無投票になり、候補者の主張が見えなくなったため、小平市選挙区においては都政への関心が深まらない状況が生じました。

インタビューの最後に磯山議員がこう強調したのが印象的でした。

「選挙公報ぐらいはまいてほしいという気持ちはありますね。都議になるからには、たとえ一方通行でも『皆さんにきちんと約束をしたい』という思いがあるのです」

 ***

無投票の混乱はなし

なお、無投票となった小平市選挙区ですが、投票日に大きな混乱はなかったとのことです。

各会場には、無投票となったことを掲示し、連絡先として市選挙管理委員会の電話番号を明記したものの、問い合わせは1件もなかったとのことです。

無投票のPRについては、広報車を市内に走らせたほか、ごみ収集車でもアナウンスを行いました。また、選挙公報はまかず、代わりに無投票を知らせるA4判のチラシを全戸配布したとのことです。

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