2月に実施された西東京市長選挙に対して、選挙人60人から出されていた「西東京市長選挙の効力に関する異議申し立て」が、3月30日の同市選挙管理委員会で棄却されました。
「選挙の自由公正の原則を阻害した事実は認められない」
異議申し立ては、当選した池澤隆史市長の確認団体「明日の西東京を創る会」が発行した法定ビラは違法なものであり、その影響によって結果に異動が生じた選挙は無効にし、やり直してほしい、と求めるものでした。
問題視される法定ビラには「逗子の失敗のリベンジは逗子でやってください」「共産・左翼に市政を渡すな」などと書かれており、次点となった前神奈川県逗子市長の平井竜一候補を誹謗中傷かつよそ者扱いするものとして批判の声が上がっています。
今回の異議申し立てでは、特に、ビラの内容の違法性を問題視しており、「引用掲載された新聞記事は意図的に失敗を印象づける編集がされている」と指摘しています。
一例として、「7億円の財源不足」と記載された東京新聞の記事のうち、元記事にはあった「本年度並みの収入で同規模の予算を組めば」という前提条件の部分がカットされていることなどが挙げられています。
こうした編集は、公職選挙法第235条の虚偽事項の公表罪に当たると指摘しています。
このような異議申し立てに対して、市選挙管理委員会は、法定ビラは形式的要件を満たしており、「選挙法の基本理念である選挙の自由公正の原則を著しく阻害した事実は認められない」として、申し立てを棄却しました。
「このビラのみで投票行動を決定するとは必ずしも考えられない」
法定ビラによる選挙への影響については、
◎申出人から提出された証拠では、全市の10万213世帯に対して新聞販売店の折込は2万8900枚。全戸に配布されたとはいえない
◎通常、投票先の決定は、報道や各種の選挙運動などを通じて候補者の政見、主張などの情報を元に決めるもの。このビラのみで投票行動を決定するとは必ずしも考えられない
とし、
「選挙人全般がその自由な判断による投票を妨げられるような特段の事態が生じたとは認められず」と指摘しました。
新委員によって審議
なお、今回の審議は、3月8日に市選挙管理委員の任期満了があったため、2月の市長選挙時点での選挙管理委員会とは異なる委員によって行われました。
また、新委員長となった鈴木久幸さんは自民党員であることから、関係者として今回の審議は退席し、佐々木順一委員長職務代理者、中江滋秀委員、二木孝之委員の3人の委員の全会一致で判断されました。
新委員での審議となったことについて鈴木委員長は「任期満了に伴うことなので、仕方がないこと。新委員は、事務局からの情報を元に客観的に判断しました」と話しています。
また、事務局も、「異議申し立ての受理は2月22日で、前任者の任期は3月8日。2週間ほどで結論を出すのは拙速のご批判を受ける恐れもあり、また、前任者でなければ判断できない事案でもないので、この日程で、新委員による審議となりました」と説明しています。
「不誠実な内容」 異議申出人総代・山口さんコメント
この決定に対して、異議申し立てを行った60人を代表して、山口あずささんから以下のコメントが届きました。
全文をそのまま紹介します。
* * *
選挙管理委員会が事前にビラの内容を確認していないことは、最初から問題にしていないのですが、なぜか、届出に際し、選挙管理委員会が記載内容の修正を求めなかったことについて違法はないと丁寧に説明していました。
まるで、学生が答案用紙に書くことを思い浮かばなかったので、とりあえず関係のありそうなことを書いてみたみたいです。
また、肝心な「事実をゆがめて記載した」か否かという違反行為については、何ら評価していません。「選挙人全般がその自由な判断による投票を妨げられた」わけではないとし、これを選挙の結果に異動を及ぼす虞の有無を判断しない理由としています。
選挙戦で配布されて多くの人に不愉快な思いをさせたビラが、事実をゆがめていることについて何ら評価せず、また、次点との得票差がわずか1500票差であった選挙の結果に異動を及ぼしたことについても、何ら判断をしないという実に不誠実な内容でした。
30日に選挙管理委員会があって、申出をした仲間が傍聴に行って報告してくれたのですが、二木孝之委員から、「申出人は中身を問題としているのではないか」との意見があったとのことで、それだけがせめてもの救いのような気がしています。
選挙管理委員会が違法判断をしないということが分かりましたので、やはり刑事告発をしないとなりません。
この事件は、この違法ビラを作成し配布した人たちもじぶんでじぶんを騙していたのだろうと思います。
悪いことは悪いとちゃんと言ってもらわないと、子どもも大人も、まともな人間にはなれません。
西東京市をいい街にするためにも、この問題をこのままにしてはいけないと考えています。
(山口あずさ)