医針伝心
土居治療院 土居望院長コラム
1997年、人類最強のチェス、プレイヤーがIBMの開発したAIに敗れた。
2016年には囲碁が、翌年の17年には将棋界最高峰の名人がAIの暴力的とも思える強さの前に敗れている。
この話、囲碁や将棋だけの問題ではない。実は現代社会の近未来に先駆して起きていることなのであろう。
そうしたなか、昨年の流行語大賞に、AI超え、がノミネートされていたという。人類の思いが込められているようにも感じる言葉だ。
このAI超え、とは将棋界の藤井聡太棋士が指した一手をAIで検索したところ、4億局面先まで読ませても、その手は悪手と評価された。ところが、藤井棋士はその手で勝利する。そこで再度AIにより深く、6億局面先まで読ませたところ最善手と判断されたのだという。つまり、藤井棋士の読みがAIを超えていたことになる。
このような意味でのAI超えであれば、鍼灸師の私の目から見れば、そうではない!
棋士の思考も治療家の思考も少し似たところがある。棋士の『読み』とは、治療家の『技術』のようなものであって、技術そのものは一つの道具でしかない。その道具を駆使して思考し、如何に病症を治めるか、この構想力が治療家の価値であり存在意義だからである。
AI超えの意味も、藤井棋士の構想力(将棋では大局観という)がAIの読みの深さを凌いでいたのである。
プロフィール
土居 望