北多摩エリアの西東京市、小平市、東村山市、東久留米市、清瀬市(※人口順に記載)の5市の市議会では、3月中に、来年度(2021年度)の予算が審議されます。
1年のお金の使い途を決める予算審議は、各市の方向性や取り組みを見るうえで重要です。
各市の予算案をまとめました。
以下、総論に次いで、人口規模順に各市の状況を紹介します。各市の予算の詳細は、それぞれ別ページを設けているのでご参照ください。
全体の傾向〜「スタート」機運が色濃く
5市の予算案を眺めると、各市とも、転機を意識しているのが見て取れます。
小平市、東村山市、東久留米市は、市の最上位計画となる「総合計画」が新たに始まる年になっており、特に東村山市は「SDGs」を前面に打ち出した印象的な予算案を組んでいます。
また、西東京市と小平市は市長選挙の影響を受けた予算案です。
両市ともに新市長が生まれることが確定しており、すでに選挙が終了している西東京市は3カ月分の暫定予算を、4月に選挙を控える小平市では新事業に取り組む余地を残した骨格予算としています。
清瀬市は5月から新庁舎の稼動が予定されており、この数年、多額を要してきた庁舎建設事業に一区切りついたことから、今後の町のあり方をイメージした予算案が作られています。
言うまでもなく、各市とも新型コロナウイルスの影響を大きく受けていますが、予算案自体は必ずしも消極的ではなく、各市とも相応に新事業を組み込んでいるのが印象的です。
東村山、東久留米の両市の一般会計は、過去最大規模となっています。
西東京市は3カ月の暫定予算 今年度補正予算で新規事業
2月18日に市長交代のあった西東京市では、定例の3月議会までに当初予算を組む時間的余裕がないことから、次回の6月議会が開かれるまでの3カ月の暫定予算となりました。
暫定予算では、職員給料や厚生費など、必要経費のみが計上されています。
まずは市民生活に支障が出ないことを目的とした措置です。
しかし、そのような予算を組む一方で、新たに就任した池澤隆史市長は「選挙期間中に市民に約束した政策」として、地域経済振興策となる◎キャッシュレスキャンペーン事業(7月・8月)、◎消費喚起応援事業(9月〜12月)、◎エッセンシャルワーカー応援事業(9月〜12月)などを打ち出しています。
この事業費は、新年度の事業ではありますが、2020年度の補正予算に組み込み、来年度に繰り越す計画でいます。
予算を確保して事業の準備を進めていくため、とのことです。
小平市は骨格予算 市長交代後の新事業の余地残す
4月4日投開票の市長選挙を控える小平市では、継続する事業などは盛り込むものの、新市長のもとで新規事業が行える余地を残した骨格予算となりました。
とはいえ、その一般会計の予算規模は前年度比0.6%と大型のもの。
記者会見では、「市の予算自体が硬直化しているため」といった説明もありました。
発表された事業のうち、独自性が感じられたものの一つに、鈴木遺跡の保存活用がありました。正式発表はまだですが、鈴木遺跡は国指定史跡となる見込みとなっています。
東村山市はSDGsを強く意識
東村山市の一般会計は、過去最大規模の予算案となりました。
その内容以上に興味を引いたのは、各事業をSDGsに照らして分類していることです。
2021年度にスタートする「第5次総合計画」では、副題に「わたしたちのSDGs」を謳っており、それと連携させるイメージで予算編成をしています。
総額で前年度のほぼ倍となる基金を取り崩しており、コロナ禍の不透明な状況でも事業を滞らせないという意思を感じさせる予算案となっています。
東久留米市は重点施策を設けない予算
東久留米市の一般会計は、「『コロナ』を乗り越え、次の10年のまちの将来像の実現に向けた予算」と位置づけられ、「あえて重点施策を設けない」という予算案になりました。
しかし、社会保障関係費の伸びなどにより、その規模は過去最大のものとなっています。
並木克巳市長のもとでは財政調整基金が比較的安定して積み立てられてきましたが、今回、初めて30億円を切るまでの取り崩しが行われています。
清瀬市は前年度比約6%減の堅実な予算
清瀬市は、新庁舎建設に一区切りがついたこともあり、一般会計では前年度比5.9%減という堅実な予算案となっています。
とはいえ、ハード面のまちづくりも組み込んでおり、とりわけ、緑地の公有地化に積極的に取り組んでいるのは注目されます。
また、子ども・女性を意識しながら駅周辺の開発に着手しているのも、独自性を感じさせます。
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上記の各市の状況は、それぞれ別ページで予算規模などを詳報しています。
各ページでは動画も掲載しています。併せてご参照ください。