西東京市長に当選した池澤隆史市長陣営が選挙期間中に発行した「法定ビラ」の問題が波紋を広げています。
投票日直前に新聞折込などで市内全域に配布されたビラで、
「逗子での失敗のリベンジは逗子でやってください」
「共産・左翼に市政を渡すな!!」
などと対立候補者となった前神奈川県逗子市長の平井竜一さんを貶めるような内容だったことから、平井さんを推した議員や市民が選挙後も反発を強めています。
池澤市長の就任の翌日となる2月19日には、田無駅北口アスタ前で急きょ、「ネガキャン選挙を許さない!」と題した緊急報告会が開催。平井さんを推した議員らが、オンライン署名をスタートし抗議の声を挙げていくことなどを訴えました。
なお、「タウン通信」では緊急報告会に記者を派遣できかったため、報告会後に窓口となる同市の田村広行議員に電話取材を行いました。
以下、電話でのインタビューの一問一答を記載します。
「今後の情報公開に不安が残る」
――取材に伺えませんでしたが、報告会はどのような様子でしたか?
「今回、平井さんを推薦した、以下の西東京市議会議員が『呼びかけ人』として名を連ねています。
大竹あつ子(日本共産党)、かとう涼子(西東京・生活者ネットワーク)、後藤ゆう子(同)、佐藤大介(立憲民主党)、田村ひろゆき(無所属)、中村すぐる(日本共産党)、納田さおり(無所属)、藤岡智明(日本共産党)、保谷清子(同)、森しんいち(立憲民主党)、森てるお(無所属)の11人の議員です(五十音順、敬称略)。
全員は来られなかったのですが、そのうちの9人と、市民の有志の方10人が参加しました。
一人ずつマイクを取り、『公正であるべき選挙をゆがめる行為で悪質だ』などと主張を述べ、候補者だった平井さんも訴えをしました。
平井さんが話したのは、『ビラでは新聞記事の一部を抜粋していたが、自分たちに都合の良い情報だけを取り上げるような人が市長でいいのか。今後の市政運営において、情報公開の不安がある』といったようなことでした。
チラシを200枚くらい用意していたのですが、ほぼすべてなくなりました。『頑張って』と声を掛けてくださる市民もいて、反応は良かったと感じています」
ネット署名でネガキャンを許さない世論を作りたい
――今回、抗議活動として、ネットでの署名を開始するとのことです。詳細は?
「『Change.org』というオンライン署名収集サイトを活用して、本日19日からネット署名を集めます(こちら)。目標は5万人としていますが、5万人に達したらどうするか、いつまで署名を求めるか、などの詳細は決めていません。まず動いた、というところです」
――署名を集めてどうするのでしょうか? 目的は?
「世論の喚起が目的です。
全国的な例では、昨年の目黒区長選挙、京都市長選挙で、やはりネガティブキャンペーンが行われたと聞いています。
もしこうしたネガティブキャンペーンが成功体験になってしまったら、今後の選挙において、『厳しい状況ならネガティブキャンペーンで挽回しよう』とその手法が定着してしまいます。これでは選挙そのものがゆがめられてしまいます。
その意味で、今回の西東京市の問題は、実は西東京市だけでなく全国的な問題なのだといえます。
ネット署名で市外の方にも参加をしていただき、こうしたネガティブキャンペーンを許さない世論を作り上げられればと思っています。もし5万筆、10万筆とインパクトのある署名が集まれば、抑止力にもなるのではと考えています」
市政が混乱する不安があるが…
――今回の抗議活動には、いわゆる野党の議員が多数参加しています。コロナ禍という状況のなか、新市長による市政運営が混乱するのではと不安も覚えますが。
「議会の対決色が強まっていくと決定に時間がかかってしまいます。今回のことをうやむやにできないという思いもあるので、そういう面も多少は出てくるでしょうが、そこはバランスだろうと思います。
これは候補者だった平井さんも私も一致しているのですが、今回の結果を認めない、ということではありません。
今回のビラは、法的にということではなく、道義的に問題があったと考えています。ですから、追及はしますが、池澤市長を辞めさせるとか、そういうことを考えているわけではありません。
もちろん会派によって考えが違うので、みんながそうだとは言いませんが、私自身は、言うべきことは言いつつも、協力するところはそうするべきだと考えています。市政を前に進めなければいけませんから」
――ビラについてですが、選挙結果にどのくらい影響があったとお考えですか。
「最初にビラを見たときに、どう対応するか、意見が分かれました。
徹底的に反論すべきという意見もあるなか、結局私たちは無視することを選んだのですが、それは、『このビラはむしろ池澤さんのほうにマイナスなのではないか』と考えたからです。
しかし、投票日直前のあのタイミングを考えると、投票先を迷っていた人は『この人には任せられない』と思ったかもしれません。特に、ネットなどで情報を拾えない方は、限られた情報のなかで投票先を選びますので。
正直に言って、あのビラがどのくらい結果に影響したのかは分かりません」
子ども条例を作った市にふさわしい姿勢を
――活動について、市民にメッセージがあれば。
「選挙だから何でもあり、とはしたくありません。『勝てば官軍』ではないですが、相手を蹴落としてでも上になればいいんだ、という考えには賛同できません。
大人もそうですが、何より、子どもがどう思うのかを心配します。
西東京市は、子どもを大切にしよう、子どもの意見を聞こうという『子ども条例』を作った市ですが、それにもかかわらず、よそ者は排除しよう、失敗した人は来るな、というような相手を痛めつける言葉を発し、『共産・左翼』といった言葉で人を排除しようとしています。
その行動は、まさにいじめや、差別の構造につながるものです。
そう考えると、副市長時代に『子ども条例』を作った池澤市長がそうした行動を取るのは残念でなりません。
このことを『おかしいな』と思った方には、ぜひ、今回のネット署名でもいいですし、次の投票行動を変えるでもいいですから、声を挙げていただきたいなと思います」
なお、今回はネット署名で活動をスタートしましたが、ネットを使えない人を視野に、さらなる活動を検討しているとのことです。
【「法定ビラ」問題】
西東京市長選挙の投票日の前日・前々日に西東京市全域に、「逗子での失敗のリベンジは逗子でやってください。ここは西東京市です」などの文言が書かれた法定ビラが配布されました。発行主体は、池澤市長の確認団体の「明日の西東京を創る会」です。ネガティブキャンペーンだとして、市民の中から反発の声が出ています。