新型コロナウイルスの影響で家に閉じこもりがちになっているなか、西東京市では、オランダ連携プロジェクト『いこいの森散歩・ひがしふしみ散歩』を3月に開催します。
とにかく外に出て、体を動かそう! という企画。
その企画の背景には、東京オリンピック・パラリンピックに向けての西東京市とオランダ王国とのつながりがあります。
西東京市役所を訪ね、担当者に取材してきました!
パラスポーツの普及発展を通じて共生社会を促進する
西東京市はオランダ王国のホストタウンとして登録されています。
きっかけとなったのは、平成29年10月に調印式を行ったオランダオリンピック委員会・スポーツ連合との連携プロジェクト「GameChangerプロジェクト~パラスポーツで社会を変える~」の取り組みで、地域においてパラスポーツの普及・発展を通じて共生社会の促進を目指しています。
以来、このプロジェクトの一環として、毎年オランダから、パラオリンピックの金メダルリストをはじめ、車椅子バスケットや陸上のパラアスリートが来日して、市民まつりや市内の小・中学校で講演やワークショップなどを行い、市民との交流を図ってきました。
オランダでは障がいは個性の一つとして捉えられています。
実際、過去に西東京市が招いたオランダのパラオリンピック・金メダリスト、ケリー・ファン・ゾン選手(卓球競技)も、小さいときから腰に障がいがありましたが、馬に乗ったり、スケートをやったりして遊ぶなど、兄弟と同じように育てられたとのこと。
現在も卓球の練習はオリンピックの選手と一緒に行っていて、「障がいがあるという意識はない」と語っていたそうです。
そんなオランダとの交流を通して、担当の西東京市生活文化スポーツ部スポーツ振興課の本谷美佳さんはこう話します。
「スポーツは、共生社会の実現に向けての大切なツールになると思います。単に競技力・参加率の向上だけを目指すのではなく、社会に参画、交流できるツールだという認識を新たにしました。
ワークショップに参加した生徒たちからも、『パラスポーツは障がい者だけのものではない。一緒にやれるものだね』といった感想も聞かれ、スポーツの価値観が変わってきていると感じています。
オランダオリンピック委員会スポーツ連合プロジェクトマネージャーのリタ・ファン・ドリエルさんは、『障がいではなくて、個人の可能性に目を向ける。本人もサポートしている人も挑戦し続けしていくことが大事』とおっしゃっています。
障がい者に手助けをするだけが良いのではなくて、一緒に生きる。ともに生きる。同じラインで生きていくということです。
オランダとのプロジェクトに関わることで、一緒に社会課題解決に向けて進んでいきながら、今後も地域を盛り上げ貢献していきたいと思っています」
オランダからのアドバイスで「散歩」を企画
3月に開催される『いこいの森散歩・ひがし伏見散歩』は、オランダ連携プロジェクトとしての新しいイベントになります。「コロナ」の流行が続くなか、どうして「散歩」というテーマを掲げたのか、企画の経緯を本谷さんにお伺いしました。
「今回の散歩は60歳上の方を対象にしています。
西東京市の『コロナ』感染者の増加に伴い、自宅に引きこもることが多くなり、特に高齢者や障がいのある人の体力、気力の低下をとても心配していました。
西東京市は健康都市宣言であり、フレイル予防にも力を入れています。スポーツ振興課として何ができるか、ずっと模索していました。
昨年は『コロナ』の影響で、オランダとの直接交流ができない代わりに、オンラインでの交流はずっと続けていました。
その際にオランダオリンピック委員会・スポーツ連合プロジェクトマネージャーのリタ・ファン・ドリエルさんに相談をしたところ、オランダでは同じ状況でも感染対策をしながら身近なところを散歩をして交流し、心身の低下を防いでいる、という情報をいただきました。
もともとオランダは、スポーツ実施率100パーセントを目指している国です。散歩やウォーキング、サイクリングもスポーツとしてとらえていて、スポーツに対してのハードルが低いんですね。
西東京市もスポーツをツールとして地域を盛り上げたいと願っていますから、これはやれる!やりたい!やるしかない!と、すぐさま企画を練り始めました。
企画中のいちばんの懸念は、『コロナ』の流行期に人を集めることに対し、社会的抵抗を感じる人が多いのではないか?ということです。
でも、リタさんから『それよりも心身の低下の影響の方が心配。オランダでは当たり前のようにみんなが散歩をしている。2.3人くらいの少人数で、家の近くを気軽に歩いていますよ』と背中を押していただきました。
散歩そのものについても、どういう反応があるのか、西東京に馴染むのかという不安もありましたが、どんなに小さな課題に対しても、いつも丁寧にアドバイスをくださり、じっくりと話し合いを重ねてくださったんです。
そんなオランダの気持ちに応えたいという思いに支えられたことで、一つ一つ課題をクリアしつつ、これならやれる!という着地点を見つけ乗り切っていけたと思います」
西東京市の高齢者は、2017年時点で全人口の23.7%を占めており、10年後には31.0%になると見込まれています。(参考「西東京市人口推計調査報告書」平成29年11月)それだけに、高齢者の方の健康維持促進の場は、大切な意味をもつといえるかもしれません。
「歩くだけでなく、コミュニケーションも取ってほしい」
また、できるだけ多くの人が参加してもらえるように配慮したことも本谷さんが力を注いだ点です。
「このイベントはウォーキングではなくて散歩、『身近な場所でののんびり歩き』です。正しい姿勢で歩きましょうとか、筋肉量を増やす歩き方を教えます、とかではありません。
まずは外に出てみましょう。ちょっとぶらぶら歩いてみましょうという趣旨で、だれでも参加しやすいハードルの低いものになっています。
さらに歩くだけではなく、ぜひコミュニケーションもとってほしいので、参加者を6人にしました。
だれかと一緒に歩き、季節の流れを共有、共感し合う時間をつくってもらうことも目的の一つです。
人と会う機会が減ってしまった今だからこそ、こういう機会を大事にしてほしいと思います。
また、一つのコースを3回継続にしたことで、次回への意欲喚起に繋がると期待しています」
今回は、いこいの森公園周辺コースと、ひがしふしみ公園周辺コースの2コースとなり、いずれも総合型地域スポーツクラブの「にしはらスポーツクラブ」と「ココポス東伏見」と連携をとって開催します。
イベント当日にも各クラブの講師が同行され、参加者に健康維持のためのワンポイントや運動不足を改善するアドバイスを教えてもらったり、ご自身の体の不調などの相談も自由にできるようになっています。
オランダとの交流があったからこそ、また、「コロナ」渦であるからこそ誕生したイベントです。最後に、本谷さんから読者の皆さんへのメッセージを紹介します。
「参加者の皆さんは、自分のペースで歩いてください。他の参加者の方とスピードを比べる必要はありません。自分の歩き方を気にする必要はまったくないし、もし自分よりもゆっくり歩く人やあまり歩けない人がいたとしても、それも個性の一つです。
『あの人遅いわね』なんて思うのではなくて、『ゆっくり歩く人なんだな』と。
そんな風に思える人が自然に増えていくことが、共生社会へと繋がっていくはずです」
いこいの森公園・東伏見公園の2コース、3月に
今回は、いこいの森公園周辺コースと、ひがしふしみ公園周辺コースの2コースとなり、いずれも総合型地域スポーツクラブの「にしはらスポーツクラブ」と「ココポス東伏見」と連携をとって開催します。
イベント当日は各クラブの講師が同行し、健康維持のためのワンポイントや運動不足を改善するアドバイスなどをしてくれます。さらに、体の不調などの相談も自由にできるようになっています。
梅や川津桜などが咲き始める季節です。
「コロナ」や冬の寒さの影響でついつい家に閉じこもりがちですが、一歩外に出れば確実に春は近づいています。ぜひこの機会に、五感を存分に働かせながら、風や花の香りを味わってみてはいかがでしょうか。
申し込みは2月25日(木)までとなっています。
コース詳細、申し込み方法については西東京市ホームページ(こちら)をご覧ください。
[いこいの森散歩]
西東京いこいの森公園周辺を週に1日歩くコース。
月曜日コース 3月1日、8日、15日、22日
◎申込番号1 午前9時30分集合(定員に達し、募集終了)
◎申込番号2 午前10時40分集合(定員に達し、募集終了)
金曜日コース 3月5日、12日、19日、26日
◎申込番号3 午前9時30分集合
◎申込番号4 午前10時40分集合(定員に達し、募集終了)
※申し込み・問合せ
2月25日(木曜日)まで受付。
・総合型地域スポーツクラブ にしはらスポーツクラブ 042-467-9919(月曜日を除く午前9時から午後6時まで)
[ひがしふしみ散歩]
都立東伏見公園周辺を週に2日歩くコース。
月曜日・木曜日コース 3月1日、4日、8日、11日
◎申込番号5 午前10時集合
◎申込番号6 午後1時集合(定員に達し、募集終了)
火曜日・金曜日コース 3月2日、5日、9日、12日
◎申込番号7 午前10時集合
◎申込番号8 午後1時集合(定員に達し、募集終了)
※申し込み・問合せ
2月25日(木曜日)まで受付。
・総合型地域スポーツクラブ ココスポ東伏見 042-452-3446(月曜日を除く午前9時から午後7時まで)