新型コロナウイルス感染症により国際交流がぱたりと途絶えたなか、先月末、「食」から真の国際化を目指そうと説くコンサルタントの横山真也さんが『おいしいダイバーシティ』を発行しました。
同書は、「タウン通信」代表の谷隆一が構成を務めています。
そんな縁から、今回インタビューをお願いしました。
横山さんは「コロナ禍は転換のチャンス。今こそ意識を変えてほしい」と呼びかけています。
ベジタリアン、ハラール対応などを呼びかける書籍 『おいしいダイバーシティ』出版
――印象的なタイトルです。どんな本ですか?
「驚く方が多いかもしれませんが、実は今の日本の食のあり方は国際標準から遠く離れています。
周回遅れと言ってもいいでしょう。
世界は近くなり、人々の交流が盛んになり、かつ、発展途上国が経済力を付けてきているのに、日本の飲食店は、今だにベジタリアンやハラールなど、『食の禁忌』を持つ方への対応ができていません。
一昨年にラグビーワールドカップがありましたが、盛り上がりの陰で『日本では食べられるものがなくて、毎日塩おにぎりばかりだったよ』とツイートしていた外国人ベジタリアンがいました。
このような状況を変えなければ、そのうち、日本に来てくれる外国人はいなくなってしまいます。そんな危機感から筆を執りました。本書では、『食』への理解を深め、真の意味でのおもてなしができるようにしましょうと訴えています。
タイトルは、『食』のおいしさと、この本の中身を知れば得するよ、という意味を合わせて付けました」
食の禁忌とは?
――「食の禁忌」とはどういうことでしょう。
「『食べられない』という多様性があることを知ってほしいと思います。
代表的なのはアレルギー。これは命に関わる『食べられない』です。
このほか、思想信条による『食べられない』が存在します。
ベジタリアンは殺生をしないという思想がベースにありますし、ヴィーガンはそれを環境問題などにまで深めています。
宗教による『食べられない』の代表格は、イスラム教における豚やアルコール。
これらを含まない、イスラム教徒が安心して食べられるものがハラールです。
宗教ではこのほか、ユダヤ教のコーシャなどもあります。
また、仏教徒は五葷(ごくん、ニンニクなど香味の強い薬味等)を取りません。
こうした『食べられない』に対して、日本人は鈍感です。
飲食店はもとより、ご家庭でも基本的な知識を持っていてほしいと願います」
一人だけ弁当の子
――今の日本の状況が続いた場合の不利益は?
「例えば、大半の日本の大学がハラール対応していません。そんなところに、優秀な学生が留学してくるでしょうか?
胸が痛む例では、小中学校の給食があります。何が入っているか分からないため、一人だけ毎日弁当を持参しているというイスラム教徒の子がたくさんいます。
世界中から来園する有名なテーマパークも、つい先日までハラール対応をしていませんでした。
今だに30年前の感覚で、東南アジア諸国を経済的に下に見る節がありますが、彼らはこれから本格的な人口爆発を迎えます。イスラム教徒は2030年には約22億人になると見られています。
また、ベジタリアンやヴィーガンは、企業のトップなどハイクラスの人に多い実情もあります。
もし日本が今のままなら、世界から見捨てられてしまうでしょう」
よくある失敗
――変えるにはどうすればいいですか?
「まずは基礎知識を持つことです。
例えば、よくあるミスなのですが、ベジタリアンメニューと思ってほうれん草のおひたしを用意したものの、最後にかつお節をかけてしまって、全部台なしということがあります。
かつお節は魚由来なのでNGなのです。
これからの時代、ご家庭でも外国人をもてなす機会はあるはずです。
本書は中学生にも理解できるようにと易しく書いていますので、ぜひ手に取って、基礎知識、心構えを会得してほしいです」
――コロナ禍ですが、なぜ今、出版を?
「国際交流が止まっている今は、またとない変革のチャンスです。
と同時に、オンラインの交流が一般化した今、真のおもてなしができなければ、『あそこはオンラインでいいよ』と軽く扱われる恐れもあります。
まさに今が岐路なのです。コロナ後に備えて、今このときに準備をしてください」
全国書店、ネット書店で販売
『おいしいダイバーシティ―美食ニッポンを開国せよ』は、
1章「日本の食の現在地」
2章「美食の国の不都合な真実」
3章「『食』からなら開国できる」
4章「未来予想図」
と、コラム9編で構成されています。
具体的な「食の多様性対応」の方法だけでなく、それが必要な理由を豊富なエピソードとデータで解説しています。
経営コンサルタントの大前研一さん推薦。
表紙がカバーと書籍で異なっておりユニークです。入手したらぜひチェックを。
四六判、184ページ、1870円。
出版社は「ころから」。全国書店、ネット書店で販売中。
アマゾンで購入➡『おいしいダイバーシティ』
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【プロフィール/横山 真也(よこやま・しんや)】
ハラールやベジタリアン対応について行政や飲食店へのコンサルティングを行うと同時に、国内外に自社メディア Food Diversity Todayを通じて情報を発信している。
2016年、シンガポールマレー商工会議所から日本人として初めて起業家賞を受賞。昨年には、菅義偉総理大臣に日本のフードダイバーシティの対応策を提言した。「フードダイバーシティ株式会社」共同創業者