都内の自治体で最も丸いポストが多いことから「丸ポストの町」を標榜する小平市で、写真作品展「丸いポストのある風景」が開かれています。
昨秋に実施したフォトコンテストに集まった546点のうちから、入賞作12点と、入選作89点を展示紹介しています。
金賞作品は後藤美香さんの作品「昭和の時代の思い出の中で」。
香川県高松市で撮影したという1枚は、石原裕次郎主演映画「嵐を呼ぶ男」の看板やコーワのキャラクターでおなじみ「ケロちゃん・コロちゃん」など、「昭和」の雰囲気がたっぷり。
そんな目で見るせいか、遅めのシャッターで動きを流した2人の女性が、不思議と昭和の頃の姿に見えてきます。あえて人物の細部を見せないところに撮影者の狙いを感じます。女性が笑顔なのもいいですね。
構図としては、石原裕次郎の赤い服と丸ポストの赤が対角線上で配置されているのが絶妙です。一見、右上の裕次郎に目が行く写真ですが、実は丸ポストのどっしりした存在感があって、写真としての安定感が生まれています。
まさに、「丸ポストのある風景」を切り取った一作といえます。
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銀賞は糸賀一典さんによる「赤瓦と待ち合わせ場所」。
こちらは島根県大田市にある石見銀山大森郵便局前での撮影です。
見る者を驚かせる写真ならではのモチーフと構図で、丸ポストの朱色が際立っています。
「待ち合わせ場所」というタイトル通り、人が数人写っているのも温かみを感じさせて好印象です。丸ポストが人々の身近にあることを感じさせ、企画テーマに合致しています。
撮影者にとって不運だったのは、中央下側のパイロンでしょう。
一直線上にあるため、これはこれで美しい写真になっていますが、この2か所の朱色はなかったほうが丸ポストの朱色が際立ったように思われます。
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同じく銀賞のもう1作は、小池基夫さん撮影の「東京駅内ポスト」。
タイトル通り、撮影場所は東京駅構内です。
魚眼レンズないし超広角レンズを使用した作品と思われますが、見慣れない光景を見せてくれるのは写真作品ならではです。手前左側の柱の大迫力と右隅に配置された丸ポストが、構図として絶妙なバランスを取っています。
近未来のような光景の中で、丸ポストの懐かしのフォルムがあるというのがユニークですね。
コロナ禍の影響によるものと思われますが、こんなに閑散とした東京駅の風景はめったにないのかもしれません。「今」を切り取るという意味でも、価値ある1枚です。
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最後に紹介したいのは、小平丸ポスト賞に選ばれた、荻野有希さん撮影の「ぼくは名カメラマン」。
市民に気軽な応募を求めたこの企画にふさわしい1枚です。「ベストショットを!」と狙う子どもの姿がほほえましいですね。
北多摩エリアの方々にはおなじみですが、撮影場所は、小平市ルネこだいら。今回の写真展が実施されている会場です。
ルネこだいら前には、「丸ポストの町」のシンボルとして、日本一高い丸ポストが設置されています。
なお、会期は3月31日(水)まで(1月25日・26日、2月24日・25日、3月15日・16日は休館)。
会場は小平市ルネこだいら。
入場無料。
詳細は小平市ルネこだいら(公式サイト)。