在宅診療NOW
まつばらホームクリニック 松原清二院長のコラム
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
今回は在宅医療と軽度認知障害についてお話しします。
最近、物忘れが進んでしまって認知症が心配だと話される方をよく目にします。
例えば以前できていたパソコンの扱い方が分からなくなった、いつも置いてある場所に物を置いていなくて捜すことが多くなった、友人や家族と話をしていると言葉がなかなか出てこない……などなど。
ただ、年齢を経れば皆なそういったことはよく経験します。
では、認知症とは何でしょう?
よく知られているのは、新しいことが覚えられない・さっき話したことを忘れてしまうといった学習や記憶の障害、他に今までできていた車の運転ができなくなるなどの遂行機能障害などです。これらのさまざまな認知機能障害が日常生活に支障をきたす程度になると認知症といいます。
対して、ご本人やご本人を知る人から記憶障害の自覚あるいは指摘はあるものの、日常生活には支障はきたしていない認知症の前段階の状態を軽度認知障害といいます。
軽度認知障害は、15%程度は認知症に移行するといわれていますが、興味深いことに40%は改善するといわれています。
また半分程度の方は自分の認知機能低下に対して、抑うつになるといわれています。
在宅患者さんでも、他院で軽度認知障害を指摘され、当院にご紹介されてきた方がいました。大好きなデジタルカメラのパソコンへの取り込みができず、自分に自信をなくして抑うつ的なご様子でした。
当初我々は日頃のタブレットを使用した認知機能の訓練を行っていましたが、患者さんは初めの頃はコツがつかめず認知機能訓練には後ろ向きでした。
しかし、ご本人の大好きな写真をご自身のパソコンに取り込んで、写真を確認してもらったところ、今までにない満面の笑みを浮かべていらっしゃいました。
さらにそれをきっかけにご本人は認知機能訓練に前向きになり、着々と訓練の点数を伸ばし、ついには獲得した高得点も自慢されるようになり、自信も取り戻すようになりました。
このように軽度認知障害の方が自信を持って過ごせる日々が来るように常に発見していく、これこそが在宅医療ならではの強みだと思いました。
プロフィール
松原 清二