街かど診療室
保谷伊藤眼科・伊藤勇院長のコラム
医療に携わり25年が経過しました。この間に多くの患者さんと話し、治療を提案し、手術を実践してきました。
患者さんが困っていることに対して、理由を見つけ説明し、その解決法の提案と治療を施行することで多くの方に喜ばれることは、この職業について良かったと思う瞬間ですが、次の患者さんに対しても気を引き締めることも忘れないようにします。
しかしながら、医療は100%確実なものではなく、むしろ不確実性の怖さはどの病気にもあり、各個人の人間の体の複雑さを目の当たりにすることも多いのです。
つまり、私達医療に携わるものが実践している治療とは、確率的に治す可能性が高いと思われることを、これまでの研究を参考に実践しているわけです。
これで行けるだろう、大丈夫ですよ、と安心感を与えるためにかける言葉とともに医療行為を実施しますが、結果が伴わずにがっかりさせてしまうこともあります。
ここで、大きく2種類の患者さんの反応に接します。
一つは、次の方法を希望し治療の継続を一緒に頑張ろうとする方で、大多数の方が前向きに行こうとします。
しかし、もう一つの反応は、ガッカリして治療の継続を望まなくなる場合です。
さらに、その責任の所在を医療側に追及してくる場合です。
医療側は悪くしようとして治療をすることも、治療結果を隠すことも基本的にはないです。
繰り返します。
医療に完璧はなく、協同して治療を進めるしかないのです。「医者だから治せ」「治せないのは無責任」。この言葉で、手術や高度医療を断念した医師の数はどれほど多いでしょう。1万人治しても1人からのこの激しい言葉で全ては無になることもあります。
治療に関して出し惜しみはしていません。ごねれば何かしら得になる治療を提案してもらえることもあり得ません。
医師の提案を聞き、自分の希望を伝え、落とし所を見つけることが肝要と思います。
プロフィール
伊藤 勇