やはり家が良い(後半)

在宅診療NOW

まつばらホームクリニック 松原清二院長のコラム

 

ところが平穏な日々は長くは続きません。

重度の心不全からの腸管浮腫による立て続く下痢、足の浮腫の増悪が見られ、体液貯留による日々の体重測定での体重増加を認めるようになりました。

それでも、毎日強心剤や利尿剤の調整を行なって、一旦は症状は落ち着きました。
症状が落ち着いてからは、日々訪問をしている当院のスタッフの特徴を冗談を交えながら話したりしていました。また、その際には、入院中の主治医の先生の話は体重や血液や画像データのことが主で、自分の心臓の病気は自分ではどうしようもないからと言われてつらかったと話をされていました。

ところがしばらくして体重はどんどん増えていき、やがては食事も取れなくなり、点滴で栄養を入れたりしていましたが、なかなか良くなりませんでした。

ただそんな時でも患者さんは(俺にはまつばらクリニックがついているんだ)と言ってくれて、私も日に2度3度と診察に行ったりもしましたが、やがては腎臓の機能も破綻して、透析も考えなければならなくなりました。

そこで、ご本人、お母さまと(在宅では透析は出来ないけれど、入院されますか?)と話しましたが、治らない心臓病に対してこれ以上の治療は希望はされませんでした。

その後、身の置き所がない体のダルさが出てきて布団の上でぐるぐる動き回る患者さんに対し、お母さんとしても(さすがに私も年だから、介護が大変だ)と話をされていました。それから入院も視野に入れながら、末期心不全として麻薬や鎮静剤などで症状緩和に努め、やがてはお亡くなりになりました。

お母さまは、(最期は息子の希望通り家で看取れて良かった)とお話されていました。
今回は立場の違いこそあれ、ご本人のご意向を尊重しながら病院主治医、患者ご家族、当院スタッフが一丸となって関わり、患者さんの希望どおり、最期まで家で良かったと皆が思えて良かったと思いました。

 ◇ ◇ ◇

この連載をまとめた『在宅医療最前線~「最期まで家で」が分かる本』が好評発売中です。1980円(別途送料)。詳しくはまつばらホームクリニックまでお問い合わせください。

プロフィール

松原 清二

在宅療養支援診療所「まつばらホームクリニック」院長。東京医科大学卒業後、複数の病院勤務を経て、2015年5月に同院開院。西東京市を中心に、練馬区・東久留米市・武蔵野市・新座市などの一部地域を訪問診療で回っている。総合内科専門医、循環器内科医。日本循環器学会専門医、日本内科学会認定医、認知症専門医、認知症サポート医。公式ホームページ:まつばらホームクリニック

編集部おすすめ

1

弱者に優しい社会へ、情報共有を 44歳で肺腺がんステージ4と診断され、2人の子どもを育てながら闘病を続ける水戸部ゆうこさん(50)の企画で、23日㈯㈷に小平市中央公民館で、がん関連の情報を広く伝えるオ ...

2

二十四節気の立冬(7日)と小雪(22日)を迎える11月は、いよいよ冬の始まり。 二十四節気とは、1年を24の期間に分け、それぞれ季節的な特徴を表す名称をつけたものです。 すこし前のデータになりますが、 ...

3

11月23日、市民の企画で 参加者募集中 西東京市と周辺市区を舞台に、時間内にできるだけ多くのチェックポイントを回って得点を集めるイベント「西東京シティロゲイン2024」が、11月23日(土)に開かれ ...

4

ワークショップのお披露目、トークセッションも 誰もが生きやすい社会を目指して、主に映像を用いた地域交流イベントやワークショップなどを行っている「にじメディア」が、11月28日(木)から30日(土)まで ...

5

 27階建て大型ビルの工事現場に、市民の思いを 公共施設が入る予定の工事現場の仮囲いに、小平の未来のイメージ画を飾ろう――。 西武国分寺線・拝島線「小川駅」西口前で建設中の再開発ビルを巡り、 ...

Copyright© タウン通信 , 2024 All Rights Reserved.