街かど診療室
保谷伊藤眼科・伊藤勇院長のコラム
日本ではまだ認知度が低いと思われる日帰り手術は、欧州や米国、アジア諸国ではスタンダードです。
日帰り手術は眼科を筆頭として、形成外科、整形外科、耳鼻科や泌尿器科などのマイナー外科領域で進歩してきています。
その理由として、手術器具の発達により、より低侵襲な手術が可能になってきているからです。
今や腹腔鏡手術などでメジャー外科でも日帰り手術が可能な時代です。
眼科での手術の多数を占める白内障手術において、私が手術を習い始めた際の眼球を切開する大きさは6ミリでした。
進行して機械では太刀打ちできない白内障の場合は12・5ミリの切開でこれは眼球の半分近く切る感覚です。
当然縫うわけですが、眼球は丸く、一定の力を加えると傷口は開き、感染などの危険性も増加します。そのため入院して生活管理することが求められました。
その後、切開の仕方により切開幅を小さくする方法や眼内レンズを折りたたみにしてさらに切開幅を縮小し、さらには眼内レンズをインジェクターと呼ばれる挿入器具を使用することで現在2・2ミリ切開での手術が可能になりました。
切開するナイフの形状で手術終了時に眼圧を正常値になるように眼内還流液を入れると傷口はピッタリと閉じる現状です。傷口をダイレクトに押さない限りは問題ないため、眼帯や保護眼鏡の使用を短期間するだけで大丈夫となりました。
また、高齢者の日帰り手術の最大のメリットは、日常生活をほとんど変える必要がないということです。
入院施設でのトラブルで多いのは、夜中にトイレに起きた際、入院していることを忘れていつものように布団から出たつもりがベッドから転落、暗がりの部屋をいつもの感覚で歩いての転倒などです。
また、違う環境での不安感からせん妄状態となり、夜中に家に帰ると大暴れする患者さんも多く見てきました。
全身疾患があり、10分以内の手術にも不安のある方は、入院施設のある総合病院で他科との連携で手術を受けるべきでしょう。どうしても介助が必要な方も、入院での治療が必要です。
プライベートな空間と慣れた日常を享受しながら治療を受けられることが、日帰り手術のメリットです。
プロフィール
伊藤 勇