猛暑に妄想する 短パンのススメ

2020年8月20日

タウン抄

「タウン通信」代表・谷 隆一コラム  タウン抄 

 

私は事務所に衣服を置いている。冬はジャケット、夏はスラックスと靴下をだ。

猛暑続きのなかでこの書き出しをすればピンと来る読者は多いだろうが、そう、私はふだん、だいぶ気楽な格好でいる。この原稿を書いている今は、ポロシャツと短パン。Tシャツではないだけ、今日は自分的にはフォーマルだ(今日は、月に1度の税理士が来る日でもあった)。

もっとも、当たり前だが、取材のときはそれなりの格好にする。夏の場合は、ポロシャツにスラックス。外出のときだけその格好になり、事務所に帰ると、すぐに短パンに履き替える。いや〜、短パンのなんと快適なことか。いっそ、取材先にも短パンで行ければいいのに……、と考えていて、ひらめいた。

世はオンラインを活用しての在宅ワークばやり。半年前まで想像もしなかったこの普及ぶりを見ていると、もしかしたら短パンワークもすぐに広まるのでは、と妄想が広がった。

いや、これは冗談ごとではなく、なかなかのグッドアイデアではないか? この猛暑の背景には、言うまでもなく、ヒートアイランド現象など人為的に引き起こされた部分がある。であるならば、人々がもっと努力をして、いわゆる「エコ」な生活をしていくべきである。ならば、なるべくエアコンなども使わないほうがいい。

最近はテレビをつけるたびに「命を守るためにエアコン利用を」の声が聞こえてくるが、確かにその呼びかけが必要な対象があるとはいえ、一方には「エアコンで体が冷えちゃって……」と長袖を持ち歩いている人たちもいる。問題はそこだ。

では、どういう場所が「エアコンが効き過ぎている」のか。言うまでもない。多くのオフィスだ。

なぜ、オフィスのエアコン設定温度は低めなのか。ネクタイをし(最近は無着用も一般化したが)、スラックスを着用し(しかもシャツをスラックスにインしたうえで)、靴を履いたままでいるからだ。要するに、暑くて当然の格好をしているわけである。

従って、まずはその改善から始めなければいけない。すなわち、短パンの導入である。このとき、裸足の認可を忘れてはいけない。短パンだけ導入しても、足先が保温されたままでは冷却効果は半減してしまう。私は事務所で裸足にサンダル姿で過ごしているが、ずっとデスクワークをしていると、エアコンの冷気で足先が冷えているのに気付くことがある。否が応でも、エアコンの設定温度を上げたくなるというものだ。

私自身が体験しているのだから、短パンワークのエコ効果は間違いない。もし、この短パン・裸足スタイルがビジネスシーンで広まったなら、日本中のオフィスのエアコン設定温度が2度から4度は上がることだろう。そのとき、どれだけの省エネ効果があるのだろうか。あるいは、この猛暑だって多少は緩和されるのかもしれない。

「ね? いいアイデアでしょう?」

妻に話してみた。

が、妻から帰ってきたのは、「どうかな〜」という連れない一言。

「なんで? 確実にエコ効果があるんだよ?」

強調すると、「それは分かるけど、男の人たちって、すね毛を見せるのが気にならないの?」ときた。

なるほど……。人と話す面白さというのはこういう場面にある。自分にはまったくない発想が唐突に突きつけられる。

正直言って、ふだんから短パンで出歩く私には、すね毛への意識は微塵もない。しかし、女性目線だと気になるものなのかもしれない。妻の口ぶりからすると、女性たちは短パンや短いスカートを着るときには、すねを気にしているということなのだろう。

ということは、少なくともビジネスシーン(オフィシャルな場面)に短パンを導入するうえでは、男性もすねの手入れをすべきなのだろう。しかし、それは現実的だろうか? 

というわけで、もう一度冷静になって考えてみた。どうすれば普及できるのか―—。

と、その先をイメージしてはたと立ち止まった。これはまさしく社会的圧力そのものであり、昨今でいえば、ハイヒールを履かされて苦痛の「#KuToo(クーツー)」問題と同根ではないか。

本当は短パンを履きたいのに、すね毛を隠さなければならないから履けない。あるいは、すね毛を剃らなければいけなくなる。それは、美意識の押しつけである。

この社会的圧力をひっくり返すには、大きなムーブメントが必要となる。さしずめ、反対運動としては「#KeToo(毛ーツー)」とでもなるか。いや、「#KeToo」なら、毛を見せられてイヤ、という、真逆の運動(短パン廃止運動)に展開してしまう恐れもあるが……。

——と、まあ冗談はともかく、新型コロナウイルスに直面する私たちは、さまざまなものが変わっていけるということに気付き出している。真面目な話、ビジネスにおける夏の服装については、もう少し自由度があっても良いのかもしれない。

 

谷 隆一

株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『起業家という生き方』(同、共著)、『スポーツで働く』(同、共著)、『市役所で働く人たち』(同)がある。

2024/11/16

[タウン抄]小選挙区と比例

タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム  先日の衆議院議員選挙の結果を見て、白けた気分になった。本紙配布エリアの結果を見ると、西東京市が入る東京18区と、小平市が入る19区は都内屈指の激戦区で、当選者と次点の得票差がそれぞれ2182票、2464票しかない。ところが、次点の候補者は比例との重複立候補により、両区とも当選を果たしている。地元からたくさんの国会議員が出ることは喜ばしいのだが、正直言って、「この仕組みでは、投票に行く気は失せるわな」とも思った。 もちろん有権者からすれば、惜敗率への影響を及 ...

ReadMore

2024/11/20

【タウン抄】バレーボール

タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム    小4の娘がバレーボールの地域クラブに入った。もともとアニメの影響があったところに夏のオリンピックが一押しとなった。 私自身はバレーボールには知識がなく、観戦経験も乏しい。「ニッポン・チャチャチャ」のイメージくらいしかなかったのだが、小学生の試合を見に行って驚いた。声援が凄まじい。何というか、まるで応援合戦の様相で、子どもも保護者も一緒になって声を張り上げている。 びっくりしたのは、その応援の仕方で、リズミカルな決まったフレーズがある。「流れは ...

ReadMore

2024/10/16

雑感と4ページの件

タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム    前号(2024年9月4日発行・516号)の「新米プレゼント」には、過去最高レベルのご応募をいただいた。「良い企画だ!」とお褒めくださった方もいたが、米不足と重なったのはたまたまのこと。中には「半月もお米を食べていない」「災害用の備蓄米を食べている」と書かれている方もいて気持ちが揺らいだが、そこは厳正に抽選させていただいた。 話はうって変わって、1面掲載の難病のソプラノ・坂井田真実子さんのこと。プレコンサートにお誘いいただき訪ねたが、歌声を聴い ...

ReadMore

2024/10/2

[タウン抄]旅ゆけば勝浦

タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム    この十数年、毎年出掛けている海水浴場が伊豆にあり、今年も7月に出掛けた。が、空いている。 「人出はこれからですかね?」 毎回世話になる海の家のおばちゃんに尋ねると、「いやぁ、海水浴ブームが終わっちゃったみたいで……」とうつむき加減に言う。その方いわく、体に砂が付くのが敬遠され、海離れが起きているのだという。 「最近の人はキレイ好きだから。それに、暑過ぎて『なるべく出掛けないように』なんてアナウンスされるじゃないですか」 と嘆き節が止まらない。 ...

ReadMore

2024/9/4

【タウン抄】オリンピック

タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム    また今回も始まった。オリンピックでのイケメン探し。我が家の女たちが競技中継を見ては、「おっ、これはイケメン!」「この子はカワイイ~」と、勝敗そっちのけで騒いでいる。 いや、必ずしも勝敗無視というわけでもない。当然ながらイケメン認定をしたほうに肩入れするわけで、同じ技を決めるのでも、イケメンとそうでない(と認定された)選手とで、反応がまるで違う。イケメンのときは大喝采あるいは落胆なのだが、そうでない場合は「ふうん」と、ほとんど一服の時間と化して ...

ReadMore

編集部おすすめ

1

弱者に優しい社会へ、情報共有を 44歳で肺腺がんステージ4と診断され、2人の子どもを育てながら闘病を続ける水戸部ゆうこさん(50)の企画で、23日㈯㈷に小平市中央公民館で、がん関連の情報を広く伝えるオ ...

2

二十四節気の立冬(7日)と小雪(22日)を迎える11月は、いよいよ冬の始まり。 二十四節気とは、1年を24の期間に分け、それぞれ季節的な特徴を表す名称をつけたものです。 すこし前のデータになりますが、 ...

3

11月23日、市民の企画で 参加者募集中 西東京市と周辺市区を舞台に、時間内にできるだけ多くのチェックポイントを回って得点を集めるイベント「西東京シティロゲイン2024」が、11月23日(土)に開かれ ...

4

ワークショップのお披露目、トークセッションも 誰もが生きやすい社会を目指して、主に映像を用いた地域交流イベントやワークショップなどを行っている「にじメディア」が、11月28日(木)から30日(土)まで ...

5

 27階建て大型ビルの工事現場に、市民の思いを 公共施設が入る予定の工事現場の仮囲いに、小平の未来のイメージ画を飾ろう――。 西武国分寺線・拝島線「小川駅」西口前で建設中の再開発ビルを巡り、 ...

Copyright© タウン通信 , 2024 All Rights Reserved.