高齢者における急性腰背部痛で一番多い「脊椎圧迫骨折」。その発症をきっかけに要介護や寝たきりになるケースが少なくありません。
そこで今回、脊椎圧迫骨折の実際や効果的な予防法について、小平中央リハビリテーション病院リハビリテーション科長で理学療法士の島崎重和さんに、お話をお聞きしました。
骨粗しょう症が主原因 腰の骨を守るには腹筋力アップを
――脊椎圧迫骨折とはどういうものですか。
「背骨を構成する『椎体』という円筒形の骨が上下の圧力によって押しつぶされる状態です。その原因は、高齢者の場合、主に骨粗しょう症です。
骨粗しょう症が進んでもろくスカスカになった椎体は、尻もちや、重い物を持つという、ちょっとした衝撃でもつぶれてしまうことがあります。
初期には自覚症状がない場合もあり、“いつの間にか骨折”しているということも少なくありません」
――治療・回復はどのように。
「骨折した箇所をコルセットで固定し、安静を保つ『保存療法』を行います。痛みがあるうちは、とにかく安静を保ち、その後、痛み・炎症が引いたら、リハビリを開始します。
概ね2週間ほど安静が必要ですが、コルセットを装着したことで周りの筋力が落ちてしまうので、リハビリは筋力の回復が中心になります」
――具体的にはどんなリハビリですか?
「2段階あり、一つはコルセットをしながら腕や足の筋力をトレーニングするものです。特に足の付け根の筋肉は腰の辺りまでのびていて腰の骨を支える働きをするので、重要です。
もう一つは、コルセットをはずした状態で、腹筋を鍛えるものです。脊椎圧迫骨折で一番多いのは腰椎の1番という背中の真ん中あたりなのですが、ここは背骨に負荷が集中するポイントなので、腹筋によって体を支えていかないといけません。
コルセットは確かに楽なのですが、筋肉を使わなくて済むので、頼り過ぎるとどんどん腹筋が衰えていってしまいます。腹筋を鍛えるといっても、きついトレーニングではありません。状態に合わせた軽い運動から始めます」
転倒予防のために、日頃の運動習慣を意識して
――再発も多いと聞きますが……。
「原因である骨粗しょう症を改善しないと、再発のリスクは高いです。
それと、理学療法士の立場で言えば、やはり筋力が重要です。
運動器が衰えている状態を『ロコモティブ症候群』と言いますが、実は、筋力等が弱ってぎりぎりの状態なのに、自分で気づいていない方が少なくありません。そういう方は転倒しやすく、圧迫骨折だけでなく、寝たきりになるリスクの高い大腿骨頸部骨折等も招きやすいです。
また、『ロコモティブ症候群』の方が安静の状態を数日続けると、ベースの筋力が低いので、回復するのが非常に困難になります。その結果、『起きているのがつらい』→『つい横になる』→『ますます筋力が衰える』→『寝たきりになる』という悪循環に陥ってしまいます」
――日頃からの運動が大切ということですね。
「激しい運動は必要ありません。ご高齢の方は、転倒予防を念頭においた、バランスをとるための筋力づくりが大切です。
くり返しますが、圧迫骨折も大腿骨頸部骨折も、多くの場合、転倒が原因だということを知っていただきたいと思います。何歳になってもトレーニングで筋力はつきますから、あきらめないでください」
【取材協力】
小平リハビリテーション病院
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