東久留米市幸町で駄菓子店「だがしやかなん」を営む山永和子さんは、その一方で、同市のまちづくりサポートセンターで代表を務め、まちづくりに奔走しています。
今年は念願だった社会福祉士の資格も取得。駄菓子店の2階で親世代対象の生き方セミナーや相談業務も実施しています。
さまざまな「顔」を持つことから、「どういう人ですか?」と聞かれることもあるが、そこで答える肩書は「DSW」。スクールソーシャルワーカーならぬ、「駄菓子屋ソーシャルワーカー」です。
高校生でボランティアに目覚める
ボランティアに目覚めたのは高校生のとき。ボランティアのクラブに入り、募金活動や迷子探しに明け暮れました。
「友達にも家族にも『なんであんたが!?』と驚かれました。でも、活動していると、充実して、細胞が喜ぶというような感覚があったんです」
もともと人から相談をされることが多かったこともあり、結婚・出産後、セラピーの仕事を自宅でスタート。同時に、電話の“何でも相談”のスタッフとしても活動しました。
学校に直談判 ボランティア拠点をつくる
転機になったのは、息子が中学3年生のとき。一部の生徒の素行が問題視された中で、「自分は他人顔していていいのだろうか」と自問したことです。
そこで出た答えは、「学校にボランティアに入ろう」というもの。直談判で空き教室を借り、地域の大人が「何となくいつもそこにいる」という空間を作りました。
活動をする中で、深刻な虐待や貧困に苦しむ子に出会ったこともあります。シェルターに逃がそうと駆け回ったときには、行政の壁を感じたそうです。
「何の資格もない町のおばさんが掛け合っても、相手にしてもらえないんです。当然のこととも思いましたが、無力感も覚えました」
そこで一念発起して勉強を開始。40歳を過ぎて大学にも通い、6年かけて社会福祉士の資格を取りました。
子どもとかかわるのには「駄菓子屋」が最適
駄菓子店を始めたのは、町中で子どもたちとかかわるのに最適と考えたから。子どもを通し、親や祖父母の世代ともゆるやかにかかわっていくことを意識しています。
根底にあるのは、「わが町の子はわが町で育てる。そのために柔軟に動けるソーシャルワーカーがいてもいいのではないか」との思いです。
値付けが最大の苦しみ
そんな山永さんの目下の悩みは、駄菓子店の経営問題。商品の値付けが最大の苦しみです。
「100円を握りしめてくる子どもが多い。その子たちにどう喜んでもらうか。悩みは尽きません。
本当は人気のかき氷を100円にしたいけど、それではほかに何も買えなくなってしまいます。ウチは消費税を取るので、結局80円で売っています。税込みで86円。それならもう一つ、おつりの14円で何か買えるでしょ?」
◆やまなが・かずこ 三鷹市出身、幼少期から東久留米市で暮らします。2015年5月、(株)TO・BI・RAを創業。同社の事業として「だがしや かなん」を経営、同時に、不登校や引きこもりなどの青少年の相談やイベント・セミナーの開催などを行っています。同店の住所は幸町1の5の23。