新会社を作って経費削減を図ろう——。
東村山市は、4月1日、ガソリンスタンドENEOSでおなじみの「JXTGエネルギー株式会社」と、地域づくりのコンサルタント業務などを行う「アジア航測株式会社」とともに、新会社「東村山タウンマネジメント株式会社」を設立しました。主に、市施設・設備の電気料金支払業務を請け負う会社です。
代表取締役に、同市の野崎満副市長が就任。新型コロナウイルスの影響もあり、民間2社と足並みを合わせて、6月になってからのPRとなりました。
なお、このような形での公民連携は全国で初の事例とのことです。
試算では年約1000万円の縮減効果
新会社が行うのは、主には、市の電気料金支払業務の代行です。
これまで市は各施設・設備ごとに電力調達を行ってきましたが、これらをできるだけ包括化し、この新会社に事務事業を集約化することで、効率化を図ります。
今年は新型コロナウイルスの影響で公共施設の休館などが続いたため、昨年度比の単純比較ができない状況になっていますが、予算ベースでは、年間約1000万円の経費削減が図れるとしています。
なぜ、新会社なのか
もっとも、事務事業を集約するためなら、役所内に新しい部署を設ければ済む話のようにも思えます。
なぜ新会社の形を取ったのでしょうか。
それについて担当課となる経営政策部資産マネジメント課の杉山健一課長は
「市場に詳しい民間にアウトソーシングすることで、より効率的に業務を推進できます。また、市に新部署を設けると増員の可能性もあり、退職金等を鑑みても人件費がかさむことになってしまいます」
と、効果を説明してくれました。
——が、そうなると逆に、「ならば、市がかかわらずに、純粋に民間委託すればよいのでは」という疑問が芽生えます。
なぜ、市も加わる会社が必要だったのでしょうか。
それについての杉山課長の説明はこのようなものでした。
「やはり予算ベースですが、新会社の年間利益は約1000万円と見込まれています。実はこの利益分を、市のまちづくりに関連する事業に充てていくという計画になっています。
仮の例えですが、参画するアジア航測はまちづくりのコンサルタント業務や測量などを行っていますから、そうした技術をこの利益分から市に提供するということなどが考えられます」
市が最大株主となるワケ
つまりは、市の側から見れば、経費削減が図れるうえ、支払った中から必要な事務事業を遂行できるという良いことづくめの仕組みということになります。
ただし、この仕組みを確実に機能させるには、新会社の意思決定を市がにぎっていることが重要です。そうしたことから今回、新会社の出資比率は、市が40%で最大。JXTGエネルギーが35%、アジア航測が25%となっています。
公募がきっかけで新事業
この仕組みを市が選択したのは、昨年実施した「民間事業者提案制度」がきっかけでした。
市民サービスの質や満足度などを向上させるための事業提案を民間事業者を対象に公募したもので、市としては、出費をすることなく、事務事業改善を探れるというメリットがありました。
そのなかで公募されたものの一つが、この新会社による電気料金支払業務の集約化です。
このほか、市では、26件の提案を採択しています。
可能性と公平性と
この新会社による契約の仕組みについて、杉山課長は「最初に提案を見たときはびっくりした」と話します。
「こういうやり方があるのか、と驚きました。こういう形でのマネジメントは全国で初めての事例のようですが、とても可能性があると思います」
なお、公平性などの課題もあり、契約は5年間としています。現状では、5年後はこの新会社は解散する予定になっているそうです。
◎東村山市