街かど診療室
保谷伊藤眼科・伊藤勇院長のコラム
今回は黄斑円孔という病気についてお話しします。
黄斑円孔とは、文字通り、黄斑部(視力を引き出す網膜の一番重要な部分)に穴が開いてしまう病気です。
いろいろな原因で穴が開きますが、黄斑部の真ん中は網膜の中でももっとも薄い場所なため、眼の中で通常とは違う力が働くと障害されやすい繊細な部分です。
症状としては、見たい場所が薄暗く見えたり、欠けていたりして、徐々にその範囲が広がるといった具合です。
黄斑円孔を引き起こす例も
以前、お話しさせていただいた黄斑前膜から進展して、黄斑円孔を引き起こすこともあります。
近視の強い方に多い傾向があるのですが、網膜剥離に移行するケースもあります。
強度近視の黄斑円孔網膜剥離といえば、この疾患が取り上げられて学会で討論されるくらい、難治性であり、多くの手術手技もまだまだ検討されている疾患です。
最近、黄斑円孔の手術手技に関して新しい方法が提唱され、多くの施設が試行錯誤しながら追随している状況ですが、まだ結論は出ていません。
手術の検討が必要
一般的に、手術でしか治療できず、方法は硝子体手術で、網膜10層の一番内側の層の厚さ5μメートル(5/1000ミリ)の内境界膜を剥がし、網膜に伸展性を持たせ、眼球内に空気(施設によってはガスも)を充填して網膜を伸ばし穴を塞ぎます。
円孔の大きさにより、また近視の度合いにより閉鎖率は異なります。
また、閉鎖したとしても、中心部の薄暗さが残る方もいますが、黄斑円孔と診断された際は、視力が下がっているときは当然ですが、将来的な剥離の危険性の軽減のために手術を受けることも検討した方が良いでしょう。
プロフィール
伊藤 勇