加齢とともに増える不整脈。中でも高齢者に多い「心房細動」は、重篤な脳梗塞を引き起こす恐れがあることを知っていますか?
屋内外の寒暖差が大きく、心臓に負担がかかりやすくなる真冬に合わせ、順天堂大学医学部附属練馬病院の住吉正孝先生にお話を伺いました。
脈拍が“速い”“遅い”“飛ぶ・抜ける”の3種類 怖い不整脈を知ろう
――不整脈とはどのような状態なのですか。
「不整脈は脈のリズムの乱れです。安静時の脈拍が正常(1分間に60~100回が目安)より遅くなる『徐脈』、速くなる『頻脈』、そして脈が飛ぶ『期外収縮』という状態があります」
――なぜ不整脈が起こるのですか。
「原因はさまざまですが、ストレスやお酒の飲み過ぎでも起こりやすく、また、加齢により不整脈が起こることも多くなります。放っておいても大丈夫なものがほとんどですが、中には命にかかわる怖い不整脈もあります」
突然死につながる不整脈もある
――怖い不整脈とは。
「最も怖いのは突然死につながる『心室頻拍』や『心室細動』などの致死性不整脈で、いわゆる“ぽっくり病”や“心臓マヒ”の正体です。
突然意識を失ったというときは周囲の人がすぐに救急車を呼び、AED(自動体外式除細動器)を使うことで命が助かる場合も多いです。
また、直接的に命に関わるものではないですが、脳梗塞を引き起こす『心房細動』も注意すべき不整脈です」
――その診断法は。
「まず心電図検査です。時々しか出ない不整脈を見逃さないため、24時間連続で心電図を記録するホルター心電図検査や、運動したときの状態を調べる運動負荷心電図検査などを行います。
また、心エコー検査などで、心筋梗塞や拡張型心筋症など、心臓に病気があるかも調べます。家族歴も重要です」
命や生活に関わる脳梗塞の予防を最優先に
――心房細動の症状とはどういうものですか。
「心房細動は、心房がけいれんするように速く小刻みにふるえて、規則正しい心房の収縮ができなくなる不整脈です。動悸などの症状が出る人もいますが、症状のない人も3割程度います。
高齢になるほど発症率が高まり、80代だと1割弱が発症しており、老化現象の一つともいえます。
心房細動には段階があり、7日以内に治まる『発作性』、7日以上続く『持続性』、投薬などの治療でも治まらない『永続性』の3つに分けられます」
――脳梗塞を起こしやすいのはなぜですか。
「心房細動によって心房から心室に送られるべき血液が心房内で淀むと血栓(血の塊)ができやすくなります。心房細動になると、48時間程度で血栓ができるといわれています。
この血栓がはがれて血管内に流れ出し、脳内の血管で詰まると、脳梗塞になります。
こうした原因の脳梗塞を『心原性脳塞栓症』と呼びます。
血栓が大きいと太い血管が詰まることがあり、他の脳梗塞と比べ死亡率が高く重度の要介護になるケースも多くあります」
――その治療は。
「まずは血栓予防が重視されます。
▼うっ血性心不全、▼高血圧、▼75歳以上の高齢、▼糖尿病、▼脳卒中・一過性脳虚血発作を起こしたことがある――という方は、血液をサラサラにし血栓ができにくくするための『抗凝固薬』での治療対象です。
心房細動があると、脳梗塞のリスクが約5倍になるとのデータがありますが、抗凝固薬治療で発症を6~7割抑えられることもわかっています」
【取材協力】
順天堂大学医学部附属 練馬病院