地域で、市民向けの医療講座が無料で行われているのをご存じでしょうか。
大半は現場の医師が講師を務めており、最新トピックスが聞けるのが魅力です。最近は映像を駆使する医師も多く、より理解しやすい工夫がされています。
市民にとって有益なこの取り組みの、実情を追ってみました。
市、医師会、病院などさまざまに開催
市民向けの医療講座は、市や医師会だけでなく、地域の病院も折々開いています。
目的はいずれも健康維持の啓発。日々の生活において健康は重要であり、考える機会を増やすことで意識向上をはかろうという狙いです。
また、社会的背景として、4人に1人が高齢者という高齢化の面もあります。
高齢化などで増大し続ける医療費について調べると、東京都民で見たとき、2002年度から11年度までの約10年で約1兆円が増えていることが分かります=グラフ。
その後も増え続け、13年度には約3兆9000億円に、さらに、推計では来年17年度に約4兆5000億円に達します。この状況を少しでも緩和するには、一人ひとりが健康でいることが重要です。万一病気になったとしても、早期発見・早期治療が理想となります。
直接医師から聞けるメリット
そこでクローズアップされてきたのが、市民を対象にした医療講座です。
本で学ぶよりも容易に知識が得られるうえ、現役医師の言葉を聞けるので、現場の実状や本音を垣間見ることもできます。
医師が顔を見せて市民と交流することで、早期受診につながるメリットも大きいようです。
本日20日に田無駅前アスタで講座「女性のがん講演会」(午後2時30分~、予約不要)を主催する西東京市健康課の担当職員は「市民に正しい知識を得ていただくことと、健康診断の受診率を上げる目的で、医師会や地域の医師の協力で実施しています」と話します。
公立昭和病院の場合
医療講座を積極的に行う病院の中から、今回は、地域医療の中核を担う公立昭和病院の例を追ってみました。
同病院は、北多摩北部保健医療圏(西東京・東久留米・小平・東村山・清瀬の5市)で唯一、「地域がん診療連携拠点病院」に指定されており、その役割として、がんに関する情報の普及啓発が義務づけられています。
それもあって同病院では、指定を受けた2011年以降、年3、4回のペースで、医師による医療講座を行っています。
胃、肺、前立腺など主にがんについてテーマごとに実施しており、2年ほど前からは会場を院内から地域の公共施設に切り替えるほど好評となっています。
講座で話す内容は、予備知識がなくても誰でも理解できるように「どんな病気か」「どんな治療か」「予防法は」といった基礎的なことが中心。そのうえで、最新情報や同病院での実情などが披露されます。
肝臓がんのテーマでは…
たとえば次回予定の「肝臓がん」の場合。消化器内科医長の細川貴範医師は「最近注目されている症例として、脂肪肝を原因とする肝臓がんが増えつつあることを指摘したい」と話します。
また、外科治療について話す外科・消化器外科医長の秦正二郎医師は、同病院の3Dソフトを使った手術法についても紹介する予定です。
人体で最も大きな臓器の肝臓は、立体のため表面からでは病巣が見極めづらいという難しさがあり、3Dソフトを駆使することで、より精度の高い手術が可能になるのだそうです。
次回講座では、これらの専門的な内容に加え、誰にでも関係のある血圧の解説も予定。小平市医師会の協力を得て、地域の「しみず内科循環器クリニック」の清水寛院長が主にその基準値について話します。
高血圧に代表される生活習慣病は、がんや動脈硬化などにつながるため、日頃の予防が重要となります。そうしたヒントが無料で得られる医療講座です。
健康のための情報収集に、こうした医療講座は積極的に利用する価値がありそうです。
公立昭和病院の市民公開講座の問い合わせは医事課(042・461・0052)へ。
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西東京市にある「佐々総合病院」が、これまでに開催してきた医療公開講座を動画で配信しています。 佐々総合病院では、市民に正しい医療情報を提供しようと定期的に医療公開講座を行ってきていますが、この春からは ...