日本人の死因第2位の「心疾患」(全体の15・5%=2014年)。その内訳をみると、心筋梗塞や狭心症といった、いわゆる虚血性心疾患が約4割を占めています。
その主な原因は生活習慣病に起因する動脈硬化であるため、日頃から注意していけば十分に予防も可能です。
以前は年間800件以上ものカテーテル検査・治療をしていたという佐々総合病院循環器内科部長・池田篤史医師に、虚血性心疾患の現状を聞きました。
虚血性心疾患とはどのようなものか
――虚血性心疾患について教えてください。
「一言で言えば、心臓に栄養を送る血管のトラブルです。
冠動脈という3本の血管が心臓の表面を這うようにあるのですが、生活習慣病などによって動脈硬化が進むと、その血管内部にコレステロールの塊(プラーク)がこびりつくようになります。それによって血液の通り道が細くなり、心臓に十分な栄養分(血液)を送れなくなる症状を狭心症といいます。
初期では、運動すると胸が痛む、といった症状が出ます。
これはいわば慢性疾患ですが、一方で急性で起こるものが心筋梗塞です。
プラークは内膜という膜で覆われているのですが、これが突然破れてしまうことがあります。すると、その傷の修復のために血液がそこで凝固します。いわば、血管内部でかさぶたができるようなものです。
結果、血管が塞がれることになり、心臓の筋肉に十分な栄養を送れなくなってしまいます。これが心筋梗塞です。
心臓破裂や心不全、致死性不整脈などを合併しやすく、最悪の場合、死に至ります。死亡率は約3割と言われています」
急性心筋梗塞の前兆は?
――なぜ突然破れるのですか。前兆などは?
「きっかけの一つには、血圧の変動が考えられます。
たとえば今の時季に話題になるもので『ヒートショック』がありますが、これは入浴時など急激な温度変化によって血圧変動が起こることが原因です。起床時なども血圧が急上昇しやすいので、注意が必要です。
心筋梗塞は、さっきまで元気にしていた人が突然うずくまる、というぐらい急に起こるもので、特に前兆はないと言えます」
初期症状は?
――発症するとどうなりますか?
「心筋梗塞の場合は胸が痛いという典型的な症状があるのですが、中には、『みぞおちがおかしい』とか、『左手だけだるい』『奥歯が変』といった症状が出る方もいます。
いずれにせよ、中年以上の方で、冷や汗を流すくらいの痛みや異常感があったなら、すぐに救急車を呼ぶべきです。
特に血流が滞る心筋梗塞は、できれば発症6時間以内に開通させたいので、ためらってはいけません」
動脈硬化の進行と心筋梗塞の発症は比例しない
――予防できますか。
「プラークが問題なので、これが破れないように『安定化』させることが大事です。
プラークは除去できませんが、薬で安定化できます。
また、狭心症の場合、ステントという金属を血管内に留置し、血流を確保する治療法を用いたりします。
ともあれ、その方の血管の状況が把握できれば、対処は多様にできます。
むしろ注意してほしいのは、動脈硬化はあるのだけどそれほどひどくない、というような場合です。安心しがちですが、実は、動脈硬化の進行度と心筋梗塞の発症は比例しないことがわかっています。
動脈硬化は多少でも、プラークの膜が弱ければ心筋梗塞が起こる可能性があるのです。
動脈硬化は生活習慣病が主原因なので、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などに該当する方は、できるだけ早く治療していく必要があります」
佐々総合病院でできること
――佐々総合病院の循環器内科の特色は。
「当院は2次救急施設なので、基本的には経過観察や生活習慣病などの改善指導、予定を立てて行うカテーテル検査や治療などが中心です。
カテーテルに関して言うと、私は前の病院で年間800~900件を行った経験があり、その扱いに慣れています。
慣れた医師がいるという点は、当院の特色と言えると思います」
【取材協力】
佐々総合病院