西東京市を拠点に活動する楢崎重視さんは、「日展」審査員も務めた日展会員で、美術界の一勢力である「東光会」の名誉会員の画家です。
社会教育にも携わり、地元・西東京市では、今年50周年を迎える「西東京市美術協会」で顧問も務めています。
日展で特選を得た油絵は、市役所に寄贈しています。田無庁舎1階(食堂入り口近く)に飾られ、来庁者の目を楽しませています。
終戦を機に「絵」を始めた
絵を始めたきっかけは、19歳で迎えた終戦です。
「死ぬことが務め」と信じていた学生の身に、社会の価値観が180度変わっていくのは苦しいものでした。
どう生きていけばいいのか……。
戸惑うなかで行き着いた答えは、「真善美の中で、『美』だけは変わらない」というものでした。
「本気で絵を」と反対を押し切り上京
地元の佐賀県で学校教諭になったが、「絵を本気でやるなら東京」と、親族の反対を押し切って上京。東京でも学校教諭を務めながら、毎夕食後の2時間、絵筆を執りました。
27歳で初めて日展に入選。以降、展覧会への出品や個展で経験を積み、52歳で日展特選を得ました。
私生活では3人の子どもに恵まれました。生計を支える職場は学校という安定したところ。いわば満ち足りた人生ともいえましたが、胸の中には絵への強烈な思いがあり続けたといいます。
根底にあったのは、「生かされた命」という思いです。
誕生日の関係で徴兵検査が1年後になりましたが、同級生の多くが出征し帰りませんでした。また、学徒動員で働いたのは長崎の軍需工場でした。8月7日に配置換えとならなければ、被爆したに違いありませんでした。
生きている喜びが創作の原動力
生きている喜び、自然や美しいものへの「感動」が創作の原動力となっています。
「『山があるから登る』というのと同じこと。きれいなものがあれば描きたくなる。そして、『絵』のことが心にあると、よりものをよく見るようになる。発見もたくさんできる。きざに言うと、人生が豊かになるのです」
88歳の今も、毎日必ず絵筆を執ります。この春には、西東京市美術協会、東光会、銀座のギャラリーと出品予定がめじろ押し。夏には、故郷・佐賀県での作品展も控えています。
◆ならさき・しげみ
1927年12月、佐賀県唐津市生まれ。受賞歴に、日展特選、東光賞、文部科学大臣賞。絵画の寄贈等に対して紺綬褒章。西東京市美術協会の活動では、地域の小学校での美術指導も長く行いました。圏域5市美術展の運営などにも関わってきています。
西東京市美術協会50周年記念展
西東京市美術協会による50周年記念展が、21日から26日まで、同市南町スポーツ・文化交流センター「きらっと」で開かれます。
故人の塙賢三さん・江崎寛友さん・原田博介さんなど、同会に属した有名作家の作品も特別展示します。
午前10時から午後6時(26日は4時)まで。無料。
21日のみ、「対話による美術鑑賞」のイベントあり。
詳しくは西村さん(042・467・7483)へ。
(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)