いつまでも元気でいるために、高齢者にとって避けたいものの一つが「脊椎圧迫骨折」などの「骨脆弱性骨折」。骨粗しょう症が主な原因で、特に女性に多く見られます。
骨折から寝たきりになるケースも少なくないため、早めに対策し、予防することが大切です。
圧迫骨折やその予防について、東京警察病院整形外科主任医長の堀田緒留人先生にお話を伺いました。
加齢や女性ホルモン減少で骨がもろく…
――高齢者の突然の腰痛は要注意と聞きます。
「脊椎圧迫骨折の可能性があるからです。脊椎圧迫骨折は、背骨を構成する『椎体』という円筒形の骨が外的な圧力によって潰れてしまう骨折のことで、高齢者の場合は主に骨粗しょう症で骨がもろくなっているために起こります。
中には、軽い尻もちや、気づかないうちに骨折していることもあります。
骨のもろさが原因なので、背骨以外にも、大腿骨頸部や手首、肩、肋骨などが折れることもあり、これらを総称して『骨脆弱性骨折』と呼んでいます」
―骨粗しょう症の原因は。
「加齢もありますが、もう一つの大きな原因が、女性ホルモンの減少です。
骨は、古い骨を溶かす『骨吸収』と、新しい骨をつくる『骨形成』を繰り返して、良い状態を保つのですが、女性ホルモンが減少すると骨吸収を抑えることができなくなり骨量が減っていくのです。
ですから、骨粗しょう症になるのは、閉経後の女性が圧倒的に多いです。
60代女性の2人に1人が骨粗しょう症ともいわれます」
――骨脆弱性骨折の診断は。
「レントゲンやMRIで、骨折の具合などを診断していきます。
注意してほしいのは、突然腰痛が出た場合などに、骨折したとは思わず整体院などにかかってしまうことです。
腰痛には腫瘍などが隠れていることもありますので、必ず科学的な検査を受けるようにしてください」
――治療について、教えてください。
「骨脆弱性骨折は、基本的には『保存治療』で骨が自然に固まるのを待ちます。
初期は動くと強い痛みが出るので、コルセットなどをして、安静にしていただきます。
ただ、状況によっては、手術を選択することもあります。例えば脊椎の場合は、最近は、『BKP治療』という、潰れたところをバルーンで膨らませて骨セメントを流し込む方法も広まっています」
――骨粗しょう症への対処は?
「基本は食事と運動ですが、骨密度検査で骨量減少が明らかであったり、骨脆弱性骨折の既往がある場合には、薬物治療が必要となります。
薬は、従来は骨吸収を抑えるものが主流でしたが、いまは骨形成を促す薬もありますので、これらを年齢や骨量、脆弱性骨折の有無を考えて選択していきます。
その処方はケースバイケースですので、担当医とよく相談してください」
閉経の早かった女性は50代でも要注意
――骨粗しょう症とうまく付き合うには?
「骨脆弱性骨折を防ぐことが大事です。
特に脊椎圧迫骨折を予防するには、姿勢を正しく保つことが肝心です。
背骨は、頸椎が前彎(わん)・胸椎が後彎・腰椎が前彎というS字のカーブになっているのですが、どこか一点に無理が生じないようにこのカーブを維持することが大切です。
頭上から吊られているイメージで姿勢を正し、背中の筋肉をぎゅっと収縮させておけると良いでしょう。
それから、骨密度を調べておくことも必要です。特に閉経が早かった女性にはご注意いただきたいです。
40代前半で閉経された方などは、50代でも骨密度が低くなっている可能性があります。『若いから』と油断は禁物です」
【取材協力】
東京警察病院