「18歳選挙権」が話題の今。実はその先鞭をつけたのが西東京市だというのをご存じでしょうか。
同市にとって誇るべきその「選挙」が行われたのは、2000年7月30日投票の「田無市・保谷市合併に関する市民意向調査」。厳密に言えば「選挙」でも「住民投票」でもありませんが、その実施に際しては当時の田無・保谷の両市長が「いずれか一方の市ででも『反対』が『賛成』を上回れば合併を白紙に戻さざるを得ない」と明言したことから、実質的には効力を持つ住民投票と位置づけられることになりました。
「若者の意向を知りたい」
この「意向調査」の特筆すべき点は幾つもあります。
まず第一は、18歳以上を“有権者”とした点。この時点では先例のないことで、調査のあり方を模索した「合併協議会」では、その理由を「まちの将来に関する意向の確認なので、特に若い世代の意見を聴きたい」と説明していました。また、多くの西欧諸国が選挙権を18歳以上としていることにも触れていました。
これらの理由は、今まさに「18歳選挙権」に関して各種の報道で紹介されていることそのもの。ちなみに、現在の世界では、191の国と地域のうち、約93%が18歳以上を有権者としています。
午後8時以降の投票者が約10%
二点目には、通常の選挙では午後8時までとなっている投票時間を、午後10時までに延長したことがあります。
結果、午後8時以降に投票したのは両市で6910人にのぼり、当日投票者の12.5%(総投票者数では10.5%)を占めました。
さらにこの意向調査では、不在者投票の投票所を両市で6カ所設けたほか、不在事由の申請を不要とするなど、投票しやすくもしています。その結果、直前の市議会議員選挙時に比べ約2倍の不在者投票がありました。
なお、開催中の参議院議員選挙(10日投開票)における西東京市の期日前・不在者投票所は、田無・保谷市庁舎の2カ所にとどまります。
投開票ボランティアに2倍の応募
これだけでも十分に画期的な「開かれた」投票といえますが、特筆点はまだあります。公募市民による「投開票オンブズマン」を導入した点です。
このオンブズマンは投開票の立ち会いなどが役割ですが、このときは市民参加を目的に全員を一般公募。当初は、延べ410人の定員に達するのか不安視されましたが、ふたを開けてみれば倍以上の823人が応募しました。
しかも、全世代のうちで、20代が最多。20歳未満も1割弱いるという、何とも頼もしい結果となりました。
投票率は44.17%
さて、肝心の投票結果ですが、合併したことで分かる通り、両市とも賛成が多数。田無側は賛否が拮抗しましたが、それについてはここではおいておきましょう。
気になるのは投票率のほうで、両市合計では44・17%。合併という身近な大問題、かつ、これだけ開かれた投票において過半数割れという結果は、どう分析すべきでしょうか。
前提からみれば、市民の多くは消極的賛成だったということかもしれません。まさか無関心だったとは思いたくないですが……。
10代の投票率は34.42%
ともあれ、このうちで、18歳、19歳の投票率は34・42%。投票資格者4311人のうち、1484人が票を投じました。
なお、この投票はあくまで「意向調査」という位置づけのため、「未成年者が参加する全国初の住民投票」の座は、この2年後、2002年9月の秋田県岩城町(現・由利本荘市)に譲っています。