さる3月に東久留米市が打ち出した公立保育園の「民間化」計画が、波紋を呼んでいます。
閉園の具体的スケジュールを示された「しんかわ保育園」では、反対運動が発足。待機児童解消や財政効果を強調する市に対し、「基幹となる公立園をなくすことは地域全体の保育の破壊につながる」「公立園ゼロの市に引っ越そうという子育て世帯は少なく、財政面でもマイナスだ」と保護者らは真っ向から対立しています。
「公立園は地域の保育のハブなのに……」
市が示した「計画」は、
▼公立保育所を全園閉園し、民間サービスへの転換をはかること(=「市立保育園の民間化」)
▼認可保育所の新設などで2018年度までに保育所全体の定員を312人増やすこと
などを打ち出すもの。
もともと市は公立園の民営化を方針としており、14年から現職の並木克巳市長も、市議時代から民営化推進の立場を取っています。
その意味では市政の継続上の方針ともいえますが、今回の計画は、公立園を最終的に全てなくすという点で意味が異なります。保育への行政の関わりがいっそう薄くなるわけで、計画を知った保護者らは不安を隠しません。
「しんかわ保育園では、近くの小規模保育所の子たちに園庭を開放しています。障がい児保育もしていますし、多彩な年間行事で地域の人の交流拠点にもなっています。ここが地域の保育のハブになっているのです。そうしたことが民間で継続されるとは思えません」
と同園に子どもを預ける保護者の一人は話します。
これに対して市は、「市立保育所と民間保育所とが担う役割に違いはない」という認識を示しています。
計画では、受け入れを段階的になくしながら「しんかわ」を6年後に閉園し、順次、市内の公立園を減らしていく予定です。
公立園廃止に財政効果はあるのか、ないのか
市がこのような「民間化」を打ち出した理由には、やはり財政面の負担があります。
市の試算では、園児一人当たりの市の負担額は、年間で、公設公営園=約137万円、公設民営園=約102万円、私立保育所=約63万円。これに加え、今ある6つの公設公営園は全て築35年以上たっており、大規模改修が必要な時期に差し掛かっています。民間化すれば、この費用を使わずに済むわけです。
ただ、市民からは、「保育に冷たいと思われる市に引っ越してくる若い人などいない」といった声も聞こえており、そうなると、地域の活性化が失われ、かつ、市民税等に影響が出る懸念が生じます。保育所を巡る経費削減策が有効かどうかは、意見が割れそうです。
なお、「しんかわ」園の保護者らは、閉園見直しの要望書を市長に送るなど精力的な活動を続けています。
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