子どもたちに自然体験を――。
ボランティアの力で41年にわたり子ども対象の野外活動などを行っている西東京市の市民団体「杉の子会」が、昨秋、「世界のボランティアの父」と評される人物にちなんだ賞を受賞しました。
その活動からは、地域ぐるみで子どもを育てることの意義が見えてきます。
キャンプ、ハイキング、スキーなど野外体験
「杉の子会」は、小学1年生から中学3年生までを対象に、年6回、キャンプやハイキング、スキーなどを行う市民団体です。
子どもたちは現在101人が登録しており、その活動を、高校1年生以上の「リーダー」がサポートしています。
リーダーは高校生から上は70代まで75人。企画から下見、実施まで、すべてボランティアで行っています。
保育園の卒園生から発足し、地域活動に発展
同会の発足は1975年。西東京市新町にある「柳橋保育園」の卒園生を中心に始まり、次第に、地域の子どもたちを受け入れるようになりました。今では、同園関係者の入会は約半数にとどまります。
地域に根付いて子どもたちを広く受け入れた利点は多いそうです。
参加者だけでなくボランティアも多世代にわたるため、地域の中での幅広い交流が促されやすい面があります。特に災害時などを想定すると、共にキャンプで過ごした「仲間」が地域に多数いる状況は、避難の場面などで好条件となるとみられます。
アレックディクソン賞
任意団体で40年以上も子どもたちに野外体験の場を提供し続ける団体は珍しく、その活動には、昨秋、「アレックディクソン賞」(推進部門)が贈られました。
同賞はボランティア活動の発展に寄与したイギリス人のアレック・ディクソンさん(1014~94年)にちなむもので、日本ボランティア学習協会が2005年から主催しています。
表彰では、ボランティアで活動を支えてきたことなどが評価されました。
実際、活動においては、ボランティアの確保が最大の課題となっています。
安全確保のためには参加メンバーの数に比例してリーダーが必要ですが、登録者の大半が仕事を抱えているため、ボランティア参加できる人は限られてしまいます。こうした事情から現在では、以前は4泊5日で実施したキャンプも3泊4日に短縮せざるを得なくなっているそうです。
ほかにも運営費の面など苦労は絶えませんが、代表の原隆さんは「20年前、30年前以上に、私たちの活動が必要とされている」と話します。 活動の状況などを、以下のように語ってくれました。
代表・原さんの話
「今回、『ボランティア』の面が評価されましたが、私自身は、そんなに堅苦しい話ではないと受け止めています。
ここに集うのは、自然が大好きな人々です。『みんなで楽しもうよ』という気持ちで続けてきただけです。
もちろん、運営には苦労が伴います。1度でも事故を起こせば次はないと思っていますから、安全を確保する努力は惜しみません。
年に6回活動するためには、毎週のミーティングが必要ですし、救急の講座を受けるなど、リーダーのスキルアップも欠かせません。そういうベースを築いてくださった先代の方々には、頭が下がります。
現在は、以前よりも私たちの活動が必要とされています。
集団行動や自然体験の乏しい子が増え、キャンプなどでは、自分の殻を破れない子をよく見かけます。でも、3泊もすると、自力で動く喜びに目覚めていく。それを目撃できるのは、私たちにとって大きなやりがいであり、喜びです。
やっぱり根本にあるのは、私たち自身の「楽しさ」です。受賞を励みに、今後も活動を発展させていきたいです」(談)
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なお、同会では、自然体験の豊富なボランティアスタッフを常時募集しています。
詳細は同会(042・461・3673)へ。
◎杉の子会(西東京市社会福祉協議会ページより)