縄文研究に市民も参加 2月10日、遺跡価値伝えるシンポジウム
縄文時代にこの地域でマメの栽培・管理が行われていた――?
2月10日、西東京市にある国史跡・下野谷遺跡の研究から見えてきたことを紹介するシンポジウムが、保谷こもれびホールで開かれます。
テーマは「食」。
この研究には市民も参加しており、考古学研究者に交じって、市民の立場からの報告も予定されています。
(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)
発掘された土器への植物・昆虫の付着を探す
研究で市民もかかわっているのは、発掘された土器に植物や昆虫などが残されていないかを探す調査です。
土器を一片ずつ丁寧に見ていき、植物などの痕跡がありそうな土器を研究者に渡していきます。
最新の研究方法では、土器の年代や何の痕跡かが特定できるため、発見される物を通して当時の暮らしぶりが推測できるのです。
マメ類を栽培していたのでは?
これまで下野谷遺跡の土器からは、エゴマ、ツルマメ、ヤブツルアズキなどが見つかっており、マメ類を栽培・管理していたのではないかと考えられ出しています。
ただし、そう言い切るには材料が不足しており、さらなる研究が求められています。
手がかりとなるのは見つかる植物のサイズ。植物は管理されると個体が大きくなる性質があるため、年代での推移から当時の食料事情が見えてくる可能性があります。
そうなると植物などの痕跡をどれだけ探せるかが肝となりますが、これが難作業です。手作業のうえ、同遺跡から発掘された土器は数十万点に及ぶためです。
すでに市民が100個超を見つけている
そこで声がかかったのが、以前から同遺跡とかかわりを持っていた市民たちです。
これまで、10人ほどの市民が研究者や学生と共に調査に当たっており、数千個の土器から100個超の植物を見つけています。
メンバーの一人で、シンポジウムで報告をする高濱劭さんは「本物の土器に触れられるのが魅力。縄文人とコンタクトしている気分になる」と話します。
市民と一緒に「下野谷遺跡」を盛り上げたい
調査に市民を交える狙いを、同市教育委員会の亀田直美さんは「イベントだけでなく、研究の面からも、市民一体で下野谷遺跡を盛り上げたい」と説明します。
「縄文人が植物を栽培していたかどうかは、いま考古学で最もホットなテーマ。南関東最大規模で1000年続いた下野谷遺跡は、その研究に適しています。
世界に発信できる話題がここにあることを、多くの市民と共有したいです」
と亀田さん。
シンポジウムもその思いから実施するものです。
シンポジウムでは、「マメが説き明かす下野谷遺跡と縄文集落」をテーマにした意見交換のほか、最新の縄文の植物利用の研究発表などが予定されています。
午後1時から5時まで(午前11時30分から展示などあり)。申込順200人。
詳しくは社会教育課(042・438・4079)へ。
【下野谷遺跡】
縄文時代中期の南関東最大級の環状集落で、分かる範囲で400軒以上の住居跡が確認されています。西東京市東伏見2・3・6丁目地内に約13万4000平方メートルの規模で広がっています。2015年に国史跡に指定されています。