ある時は彫刻家、ある時は美大の講師、またある時はオリジナル曲を歌う音曲師、またまたある時はテレビや映画の曲に作詞提供――。
一体この人は何者⁉
思わずそう問わずにいられぬ多才ぶりを見せる上野茂都さん。
しかし当人は、「売れないうちにいろいろ手を出しただけ」と飄々とした口ぶりで語ります。
そんな上野さんが、17日には、地元のイベントの一幕で、三味線弾き歌いなどを披露します。
(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)
彫刻家、客員教授、音曲師、作詞家と多彩
上野さんは、とにかくさまざまな顔を持っています。
彫刻家としては地元にも貢献。武蔵野美術大学で客員教授を務め(現在は退任)、2011年には小平市小川町区画整理記念公園の記念碑を制作しました。
一方、音曲師としてはこれまでにCDを10枚ほど発表。ライブも頻繁に行い、さる4日にも、ラジオ局「TOKYO FM」にゲスト出演したばかり。三味線を片手に独自の世界観を歌い上げるスタイルが、一部で根強く支持されています。
このほか、学校業務に就くなど活動は多彩。
これまでには絵本を出版したり、作詞も手掛けてきました。
ヒット映画のあの歌、子どもに人気のあのダンス曲も
2012年には映画「のぼうの城」で、田植え唄など3曲の作詞を担当。自ら農民に扮し、作中で歌ってもいます。
また、15年には、NHK「Let's 天才てれびくん」のエンディングテーマ「めしどき むしゃりずむ」の作詞を請け負い、子どもたちのダンスブームを作りました。
なぜか本人は嘆き節
ところが——。
そんな華やかな実績がありながらも、当人からの発言は耳を疑うものが連発します。
いわく……、
「彫刻一本でやっていくのが厳しくて、いろいろやってきただけですよ」
「彫刻をやりながらも、形態の残らない、消えてしまうものに惹かれるんです。だから歌をやっているのかな……」
「穴を掘っていれば何かにぶち当たるだろうとねばってきただけです。若気のいたりがいっぱいあるんですよ……」
どこか嘆き節のような言葉のそれぞれ。
ただ、よく耳を澄ますと、どれもが「彫刻」を中心にしていることに気づきます。
雑念が消えていく、あの時間が貴重
多才・奇才ぶりを見せながらも、やはり、正面から向き合ってきた彫刻の存在が大きいようです。
「なんで彫刻を続けてきたかって、木や石に向き合っているときの、あの感覚。
形のことしか考えず、雑念が消えて自分が真空状態になっていく……。
あの時間が自分にとって貴重なんですよね」
◆うえの・しげと 1961年千葉県出身、美術家、音曲師。多摩美術大学彫刻学科非常勤講師。CD作品に「上野茂都の別天地」「めしのしたく」ほか多数。絵本作品に『ふとんのきもち』(絵・文、SKIP発行)、個展開催多数。彫刻ほか、絵画、イラスト、工芸なども手掛けています。東村山市在住。ホームページはhttp://shigeto.news.coocan.jp/
自然学習イベントに出演
上野さんが参加する17日のイベントは、玉川上水のあり方を考える内容。タイトルは「謡い、語る 玉川上水の、これまでとこれから」。「小平市玉川上水を守る会」世話人代表の庄司徳治さんのトークなど。上野さんは、玉川上水の歴史を活弁風に語り、それに関連した曲を三味線で歌います。小平市小川公民館で午後2時から4時まで。300円。定員70人。企画運営は地球永住計画。詳しくはリーさん(chikyueiju@gmail.com)へ。