志賀泉

ウクライナの思い出

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム ウクライナの兵士と握手したことがある。二〇一七年秋、チェルノブイリ・ツアーに参加した時のことだ。 彼は高線量地帯にある幼稚園の廃墟に立っていた。旅行 ...

東京五輪雑考

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   東京オリンピックが閉幕し、何か物足りなさを感じたのは僕だけではないだろう。開催に反対意見が多かったとか、無観客で盛り上がりに欠けたとか ...

Jヴィレッジのバナナランナー

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   三月二十六日午前十時。聖火リレーのスタート地点だったJヴィレッジ(福島県楢葉町・広野町)は閑散としていた。セレモニー会場の撤去作業をビ ...

ご近所に五重塔

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   なくても別に困らないけど、ご近所にあると思うと少し嬉しい。僕にとって五重塔はそんな存在だ。いつもの散歩コースから少し足を伸ばした所に五 ...

神さまのお通り

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   台風の被害はもちろん「自然災害」だが、最近のスーパー台風を生み出しているのが地球温暖化であり、文明の所産であるなら、広い意味ではこれも ...

浪江町の家で

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   先日、取り壊しが決まった友人の実家を訪ねた。 場所は福島県の浪江町。そう、二○一七年三月末に避難指示が解除された町。山間部は今も帰還困 ...

骨折り損でも

  タウン通信が十周年を迎えた。僕とタウン通信は創刊号からの付き合いなので、この「猫耳南風」も連載十周年だ。タウン通信と「猫耳」に拍手。そして感謝。 この十年間は、僕が二〇〇七年に『TSUN ...

脚の折れたピアノで

  NHK BS1に「駅ピアノ」という番組がある。世界の主要都市の駅のコンコースにピアノを置き、通りすがりの人が気ままに演奏する様子を固定カメラで定点観測している。ポピュラーな曲もあれば自作 ...

「チェルノブイリ」またやります

  僕が持っているフォークギターには「世田谷区備品 玉川作業所」のシールが貼ってある。それがなぜ僕の所有物になったのか、実はよくわからない。とにかく、僕の職場である狛江市の福祉施設で「使われ ...

巣立ちの準備

  もう二十年以上も前になる。小平市に住んでいた頃の話だ。鷹の台の駅前商店街を歩いていたら、目の前を掠めるようにしてツバメが飛んでいった。懸命に翼をばたつかせ、危うく地面に落ちそうになりなが ...

ジュゴンの海はいま

  九年ぶり、沖縄に飛んだ。チェルノブイリ・ツアーでご一緒した元中学教師のTさんの誘いで、辺野古ツアーに参加したのだ。僕はかつて、辺野古の海に棲むジュゴンの保護活動をしていた。基地建設のため ...

あれは夢だったのか

  先日、詩人の男女二人を福島県の被災地に案内した。噂が広まると嫌なので浪江町の某所としておく。浪江町は沿岸部が津波で壊滅的な被害を受けている。おまけに原発事故で人命救助が打ち切られ、助かる ...

チェルノブイリ報告会を開きます

  唐突ですがイベントの告知です。チェルノブイリの旅で僕が撮影・編集した映画の上映と、旅の同行者である大石芳野氏のスライド・トークを開催します。 「『チェルノブイリ』から『フクシマ』へ」 日 ...

チェルノブイリ旅行

  時間は流れる。 チェルノブイリ原発事故のためゴーストタウンと化した原発労働者の街、プリピャチは森に呑み込まれつつあった。かつての中央通り(レーニン通り)も左右から樹木が押し寄せバス一台が ...

ある朝、庭に

  想像してください。 あなたは庭付きの一軒家に住んでいます。ある朝、雨戸を開けてみたら、ブルーシートに覆われた物体が庭の一角にどっかりと居座っています。軽トラックの荷台にぴったり収まるくら ...

幸福のケサランパサラン

  みなさんはケサランパサランをご存じだろうか。知らない? おそらく大多数の人は知らないのではないかと思う。 * * * ある日、女房から「幸せを呼ぶケサランパサランを捕まえたよ」と絵文字入 ...

反対はしないけど

  南相馬市小高区と浪江町をまたぐ沿岸部にかつて東北電力の原発予定地があった。土地の買収は九割九分終わっていたが、福島第一原発の事故により計画は白紙撤回された。 * * * 僕は以前書いた短 ...

変わりゆく故郷

  僕の故郷である南相馬市小高区は昨年七月に避難指示が解除されたばかりで、帰還した住民は千人くらい(元の人口は一万三千人)と聞いていたが、解除から八ヶ月がたち、帰還住民は千五百人に増えたとい ...

地下鉄サリン事件のあの日

  この文章を書いているのは三月二十日、地下鉄サリン事件が起きた日だ。「二十二年前の今日」とニュースキャスターが話すのを聞いて「ああ。そんなにたつのか」と感慨にふけるのは、実は二十二年前のこ ...

蜘蛛と蜜柑

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   毎年、秋が深まると女郎蜘蛛の巣をいたるところで目にするようになる。女郎蜘蛛は蜘蛛の女王と呼ばれるだけあって色があでやかで張る網も大きい ...

たまには宣伝を

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   最近、僕の関わった本が二冊出ましたのでお知らせします。 一冊目は『フクシマ発』(現代書館、1944円)。 福島県に深い関わりを持つ作家 ...

華燭の日

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   明日 、姪の結婚式に出席するため姫路市に行く。姪は薬剤師であり、相手の男性は歯科医。二人は医薬系大学の学生時代に茶道部の仲間だったとい ...

不思議な話

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   この原稿が掲載される頃は初秋だと思うけれど、これを書いている今は夏。ということで、今回は僕が経験したちょっと不思議な話をしてみよう。 ...

軍艦島

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   僕が軍艦島を見たのは二〇〇三年の夏。十年以上前のことだ。軍艦島へ行くには長崎港からフェリーに乗って高島という離島にまず上陸する。高島は ...

南相馬市の球児たち

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   日曜日の朝に、防潮堤の上で海を眺めていた。一昨年の秋のことだ。南相馬市原町区。津波に襲われて海辺の集落がまるごと消滅した。民家の土台は ...

ジュゴンに会いに行く

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   五月の連休に伊勢神宮を参拝し、鳥羽水族館にも足を延ばした。目的はジュゴン。鳥羽水族館は日本で唯一、ジュゴンを飼育している水族館だ。 * ...

水になった村

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   三月末、岐阜県の揖斐川町で「水になった村」というダム湖に沈んでいく村を記録した映画を観た。 日本映像民俗学の会の岐阜大会で僕が出演した ...

ある日、女房が

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム   「人生は意外性の連続」と言ったのは誰だったろう。 思い出せないが、確かにそう、と納得しながら日々を送っている。 * * * たとえば、 ...

Copyright© タウン通信 , 2024 All Rights Reserved.